Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ヘンリーの悪行リスト

「ヘンリーの悪行リスト」J・S・シェパード。

例によって、映画の原作を、映画を見ないで読む。どうも、映画よりも小説の方が好きなのである。たぶん、時代遅れの人間なので、映像表現についていけてないんだろう。
テレビっ子だったんだけどなぁ。

で、この小説だが、主人公はヘンリー。ある日、高校の卒業パーティーで、みんなのあこがれのお嬢さんとデートに成功する。おまけに、初体験にまで成功!
貧しい家庭の生まれだったヘンリーだが、すっかり舞い上がって「僕とずっと一緒に」と彼女に言ったら「冗談じゃないわよ。あんたと私は違うじゃない。これは遊びよ」とあっさり拒絶。女性に絶望したヘンリーは、復讐を企て、冷酷非情な企業買収屋になる。あだ名は「暗殺者」。そうして、カネに目がくらんだ女性をもてあそんでポイ捨てする人生に邁進するわけである。
それが、ある日、ホテルの一室で突然、そんな人生がイヤになり、身投げを試みる。そこにたまたま居合わせたホテルのメイドのソフィーが彼を救う。
そして、ヘンリーは過去に行っていた悪事をリストに書き連ねて、そのリストの当事者に謝罪の旅にソフィーとともに出かけるのだった。

まあ、映画のシナリオみたいな小説だから、きっちりハリウッドのスタイルを踏まえています。
ロマンスと、夢と、あっと驚くどんでん返し。シナリオ学校の教科書に忠実な。
ここまであからさまにやられると、いっそ清々しいってもんですな。

評価はナシ。まあ、よくこなれたストーリーです。

だけど、小説読みには、もうちょっと食い足りません。
ハリウッドくさい、それだけが原因だとは思えませんね。それでも、もっと良い小説はあります。
たぶん、映画の筋書きを意識しているから、場面が単線でしか進んでいないのです。
欧米のよくできた小説は、物語が必ず重層的に進み、そこで「いったいどう絡んでくるんだろう?」という興味があります。
というか「ああ、そうだったのか!」という深い感動、みたいなものが。
あるいは「結局、こうしかならないのか。。。」という諦観というか、悲しみというか。
それが、この小説にはない。
最初から大団円目指してストレートに突き進むんです。
これで感動、できませんねえ。水戸黄門的な安定感、というわけじゃないけど。
もうちょっと、現代の人間は、テクニックを弄さないと(苦笑)

ま、こんなものかな。つるつると、小麦粉の多い蕎麦を食ったような読後感はなんとも(笑)