Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

さくらインテリーズ

「さくらインテリーズ」戸梶圭太

この小説は、あくまで「SF」である。だからして、「つくり話」である。

新宿区さくら児童公園なる公園に、5人のホームレスが住み着くのが物語の発端。男達は、もとの職業が教師だったり考古学者だったりするので、みんな「元インテリ」ということで、自分達につけた名前が「さくらインテリーズ」である。
このインテリ達だが、そもそもホームレスになった原因は、だいたい暴力だとか買春だとか、捏造がばれたとか、まあろくなもんではない。
このろくでもない男達が、なんとかホームレスから脱出しようとして、さらに悪い局面に陥ってしまう有様を思い切り書いた連作短編である。

もしも、小説のおもしろさの定義が、刺激の絶対値だとしたら、この小説は確かに面白い。なにしろ、徹底的に弱者はより強い者にはへつらう人間であり、強者は弱者にまったく興味を持たないというのが基本コンセプトである。
ある意味、たいへんよく当たっている。(笑)
だから、登場人物に思い入れたりすると、たいへん不愉快になるようになっている。そこまで含めて、作者の狙いである。

評価はナシ。なんでかというと。私は、この作者が嫌いだから、である(笑)

とにかく、突っ走って書いた、一切の批評を許さない作品は、たぶん、こういうありようでしかない。
もっと言えば、こんな書評なんか、存在すること自体が間違いなのだ。そんなものを冷笑するところに、この作者の本領がある。

では、読者は、いったいどうすればいいのか。
ふたつ、方法論があるだろう。

ひとつは、徹底的に作者と同じく、冷笑しながら読むこと。しかし、この作品に対して距離を保ちつつ、虚無の楽しさに浸るのは、私はイヤである。なんでかというと、作者が嫌いだから(苦笑)嫌いなやつの術中にはまるほどマゾではない。

もう一つの方法は。スルーである。
小説の中の、あまりに陳腐な描写の連続は中学生レベルじゃんか、という話をしちゃうとか、しそうになるけどしちゃいかん。反発しちゃうと、それも術中なのですな。
「カネ返せ」もいけない。それすら、思惑どおりである。

私は、なんとなく、この作品は「小説」全般に対する「荒らし」だと思うのである。「荒らし」はスルー。そういうことですね。