Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ウチのシステムはなぜ使えない

「ウチのシステムはなぜ使えない」岡嶋裕史

副題が「SEとユーザーの失敗学」である。わかりやすくいえば、これは業界暴露本である。
とはいえ、指摘されている事柄は、すでに業界では「常識」とされていることが多い、不幸なことに(苦笑)。つまり、この本は「IT業界」以外の方々が、もしも運命のいたずらでIT業界の人間を相手にしなければならないという事態に陥りそうな場合を想定して書かれたものである。
もちろん、後から読んでもいいのだけど、その場合はもっと立腹することになるだろう。

ぶっちゃけて言うと。実は「システム」を導入して「満足した」人は、せいぜい2割くらいしかない、というのがIT業界の「定説」らしい。
それに、「しぶしぶ、使えないこともない」がその2倍くらい。つまり、併せて「どうにかこうにか稼働」が6割。じゃあ、残りの4割はどうなのか。
これが「不幸」になっているのだ。思い出したように使われれば良い方で、まったく埃をかぶるケースだってままある。

で、本書は、このような「不幸」がいかにして起こるのか?そのメカニズムを説明(笑)してくれる本である。
といっても、ユーザー側の見違いなどは、せいぜい「IT化すべきでないことをやろうとする」くらいのものだろう。
根本的には、ユーザー、営業、システムコンサルタント、SE、PGの間にあるコミュニケーションギャップの問題である。
ギャップは放置され、いざシステムの検証とか稼働のステージで「うぎゃ」という羽目になるのだ。

評価は☆ひとつ。早い話が、自戒として(苦笑)。

私が思うに、システムが使えない理由は、単にコミュニケーションギャップの問題だけではない。
コンピュータの本質にかかわる問題があるのだ。

わかりやすくいえば、コンピュータは「記憶して計算する」機械である。ナニナニを入力、保存、計算、出力してできあがり。「うんちゃらシステム」というやつは、だいたいそうである。
で、その結果がうまくない。「こりゃダメだ」
それは、計算結果が思い通りに出ないこともあるが(計算ミスとか、帳票の設計ミスとか)それよりも圧倒的に「入力」が違うのである。

わかりやすく言えば。
「○○システム」がうまく動かないときは、「ちゃんと入力がされてないから」が結論になってしまうケースが多い。
たとえば、営業効率を上げようとして、営業管理システムを入れる。だいたい、営業日報だのスケジュールだのを入力する。
それに基づいて営業活動を改善するぞ、と。できた話をあまり聞かない(爆)。
当然「なんで?」と納入会社に聞くだろう。その結論は「ちゃんと、日報を正確に入力してもらわないと」になる。
では問うが、そもそも「きちんと日報入力ができるほど、管理レベルが高い会社」に、このシステムは果たして有効だろうか?
ぶっちゃけてしまえば、仮にこのシステムで「成果が上がった」としたら、それはその会社が優秀だったからで、システムにはなんの関係もないだろう。
何か別のシステムなり仕組みを利用したところで、おそかれ早かれ、成果を上げていたに相違ない。

「コンピュータ 入力ダメなら タダのハコ」
これが、IT業界の誰も言わない「超真実」でありますぞ。ITのうさんくささは、顧客の努力なり優秀さを、己の実績として宣伝する点にある。
ようは、優秀な会社を顧客にできるか否か。それで、実績が決まってしまうのだ。
最初から、成績優秀な子供を集める学習塾と同じくらい、うさんくさいわな。(笑)

ま、それでメシを食っている。
なんとか、そういう状況を覆したいと、工夫もしているのだが、正直なかなかうまくはいきませんなぁ。。。