Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

死者覚醒

「死者覚醒」T・M・ジェンキンズ。

2006年、貧困地区へのボランティアをしている医師のネイトは、妻とショッピングセンターに出かけているところを狙撃され絶命。
妻は、頭部の冷凍保存に携わっていたこともあり、愛する夫の頭部を切断、直ちに液体窒素に漬けて保存する。
やがて、2070年。ある死刑囚の処刑が実行され、彼の遺体は巨大バイオメディカル会社に運ばれ、そのまま死者覚醒の実験に使われる。
そして、ネイトは、目を覚ます。
しかし、そこには既に愛する妻はいなかった。彼女は、彼の死後、ロサンゼルスをおそった巨大地震によって、既に亡くなっていた。衝撃を受けるネイト。
それだけではなかった。そこは、ネイトがかつて知っていた世界とは、まったく違っていた。
大気汚染が酷く、外はマスクなしでは歩けない。おまけに、すべての病原菌が抗生物質の使いすぎで、耐性菌になっており、人々は伝染病によって簡単に亡くなっていくのだった。
しかも、かつてネイトが学んだ医学は、すでに化石で役に立たない。
貧富の差は激しく、極端なエネルギー不足により各州の間の交通も寸断されている。
まったく見覚えのない世界で、ネイトは、自分の覚醒の秘密に近づく。

実際に、現在でも遺体の冷凍保存を行う会社が米国にある。しかしながら、仮にその技術ができたとして、未来の人類が化石のような過去の人間を生き返らせようと思うのか、はなはだ疑問に思う。
ちなみに、全身の冷凍保存は莫大な費用がかかるため、この小説のように頭部のみ保存する人のほうが多いのだそうだ。
未来では、しかしながら、私たちが学んだ知識はすべて役に立たないわけで、蘇ったところで、その未来の社会に貢献する方法すらないのに違いない。
知己友人もいない、家族もいない世界で生きていくのに、生活の糧を得るすべもないとしたら、ずいぶん苦しいのではないだろうか。

評価は☆。なるほどのSFということで。

本書の中に、蘇ったネイトが、女性医療スタッフと深い仲になるシーンがある。
ふと思ったのが、彼の頭部から下は、まったく他人の肉体である。この時代の人類の生殖能力は著しく衰えており、人工授精以外では子供はできないという設定になっているのだが、これ、もしも受胎したら、いったい父親は誰なんだろう?と思った。つまり、遺伝子は、赤の他人のものなんですよ。
まあ、ちょっと手の込んだ養子だと思えばいいのかね?ふうむ。いきさつから考えると「製造物責任」だけは生じるのでしょうなあ(苦笑)

さらに、この際だから、私が知っている秘密を暴露する。
実は「不死医療」は、すでに技術的には完成しているのだ。もちろん、永遠に不老不死かどうかは確かめようがないわけだが、しかし、ある程度画期的に寿命を延ばすことは可能だと。
しかしながら、これを発表してしまうと、大変な問題が起きる。誰でも分かるように、エネルギー問題やら食料問題やら、あるいは誰が先に不死医療を受けるかという格差問題。下手をすると優性思想の復活など。
で、あまりにやばいので、封印しているのだ。。。

ちなみに、本日は4月1日であります(笑)

不老不死を考えるよりも、まず長生きしたいと思えるような世の中をつくるほうが先。月並みだが、そういう結論になりそうですなあ。