Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

霊鬼頼朝

「霊鬼頼朝」高橋直樹

ご存じのように、鎌倉幕府を開いた源氏は直系三代で滅び、北条氏に後を取られてしまう。
源氏の滅びを、それぞれ頼朝、頼家、実朝、公暁を主人公に描いた連作短編である。

本短編集の小道具に使われて印象的なのは、平時平の「箱」である。この「箱」の中身が何であるか。それが分かったときには「なるほど」と頷いてしまった。
それから、源氏の宿痾だと思われる「目の上の腫れ物」である。源氏は、この遺伝病のために、皆死んで行く。

なかで印象的なのは、二代頼家である。父をしのぐ強者で有名な頼家は、実朝の兄であり、北条政子の子であるが、養親が比企一族であった。
そのため、北条氏と対立することになる。

やがて、頼家は、目の上の腫れ物を発して倒れる。将軍のつとめを果たすべくもなくなり、北条家は跡継ぎに、実朝を立てる。
ところが、一時は絶望的と見られた頼家は、驚異的な体力で危篤状態から回復する。そこで、自分が将軍位を退位させられているのを知り、荒れ狂うのである。
しかし、今更もとには戻せない。
北条時政は、困って頼家を暗殺してしまう。周囲には、「そのまま病状が悪化して死んだ」とした。
この頼家の子が公暁であり、北条氏は父親の敵となる。
もしも頼家の暗殺がなかったら、鎌倉政権の歴史は変わっただろう。

評価は☆☆。珍しい題材と、丹念に書き込まれた文章である。

鎌倉に行くと、実に小さな町であることに驚かされる。その小さな町の中に、古刹名刹が数多ある。
鎌倉は世界遺産に登録する動きがあるようであるが、それも当然だろうと思う。
しかしながら、何もそんなことをしなくても、日本だけの宝でよいのではないか、とも思うのである。

本書を読んだ後、鎌倉巡りをするのも、より興が感じられて良いのではないか、と思う。
そろそろ紫陽花の季節である。出かけてみようかな。