Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

荒川流域ジョーさんの植物そぞろ歩き

「荒川流域ジョーさんの植物そぞろ歩き」豊島襄。

私は荒川が好きである。自宅から近いし、河川敷は自転車で走るのには非常に良い。クルマもいないしね。
もっとも、ロードレーサーでびしびし鍛えるような根性はないので、ランドナーでノンビリと流していることが多い。疲れると、適当に休む。そこで、植物を見るのも好きである。

かつて、昭和天皇陛下は「雑草という名の植物はない」と仰せられた。このご発言を、たとえば政治的に解釈したり、あるいは名家思想の名残を感じたりするのは、適当ではないように思う。
陛下は植物学に造詣が深くあられた。ごく簡単に、学究としての感慨を述べられたのに相違ない。

今では、いろいろな植物が栽培されている。だけど、私は、いわゆる「雑木」「雑草」が好きなのである。
今年の東京は、温暖化の影響か、やたらポピーが繁殖していた。ポピーは、夏の草刈り前には結実し、種子となって来年の春まで眠ってしまう。
身近ではあるが、これもスプリング・エフェメラル(春の妖精)の一種だろうと思う。外来種だけどね(苦笑)。
スプリング・エフェメラルとは、春先に開花し、夏草が繁茂して来る頃には結実して枯れてしまう、春先だけの植物のことを言うらしい。カタクリなんかが典型である。
もっとも、荒川流域で、私はカタクリを見たことはない。本書には掲載があったが、たぶんもっと秩父よりのほうだろう。自転車で登って行くにはチト遠い。私の脚力では、という話である(苦笑)。

巻末には、埼玉近郊の巨樹の紹介があって、それぞれに風格がある。巨樹を訪ねて自転車ポタリングしたら、きっと楽しいのじゃないかと思う。

評価は☆☆。身近な植物が好きな人にお勧めしたいが、ややマニアな趣味に入るかな?

本書の中で、ちょっと面白い話があったので紹介する。
セイタカアワダチソウという奴は、抜群の繁殖力を備えた外来種である。花粉症の原因だという話もあった。もっとも、これはやや濡れ衣であったらしいい。
しかしながら、他の植物を制圧する毒素を出しつつ勢力を広げていき、種子でも根でも増えるという、まさに最強の外来種である。
ところが、である。
荒川流域でも、一時隆盛を誇ったセイタカアワダチソウに、日本古来種がジリジリと巻き返しを図っているのだという。
その日本古来種とは?驚くなかれ、ススキである。あの、お月見でおなじみの植物である。あれは、日本古来種なのだそうだ。
セイタカアワダチソウは、先に述べたように他の植物を排除する毒素を出しながら勢力を広げていくのだが、そうして単一種になってしまうと、自らが出した毒によって自家中毒のような症状を起こし、勢いが衰えるのだという。
そこに、もともと乾燥に強いススキが、再び生えてくる。
荒川の河川敷では、あちこちでセイタカアワダチソウとススキの戦いが行われているのだ。
ススキはC4植物である。乾燥に強い、エネルギー効率の非常に高い植物なのである。
旺盛な繁殖力と毒で武装したセイタカアワダチソウ。これに対して、日本古来種のススキは、少ない水分で効率よく光合成する「省エネ技術」で戦いを挑む。
さて、この「本土決戦」の行方が気になるところであるが。

皆さん、ご安心ください。我がススキ軍は、ジリジリと外敵に打ち勝ちつつあるようですよ。

散歩中にセイタカアワダチソウを見かけたら。その群落に、しぶとくススキが食らいついているのが観察できるでしょう。
そういう光景を見かけたら、日本古来種の奮戦ぶりを、是非ご声援くださいな(笑)