Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

「霞ヶ関埋蔵金男が明かす「お国の経済」」

霞ヶ関埋蔵金男が明かす「お国の経済」」高橋洋一

小泉内閣の時代に、元官僚でありながら竹中平蔵氏の懐刀として活躍し、その後「埋蔵金」問題を指摘した著者による、ざっくりとした我が国経済の解説本。
経済学の基礎に基づいて、埋蔵金問題であるとか財政問題、金融問題について概観した本。
文字通り概観であるから、気楽にさくさくと読めるところがよい。

まず、埋蔵金の正体だが、これは企業会計を一通り習った人なら誰でもわかる「純資産」のことである。つまり、総資産から総負債をひいた残り。これがマイナスなら債務超過であるし、現実にそうなってしまっている特別会計もある。みなさんご存じの年金特会である。300兆円以上の債務超過。それでも破綻と呼ばないのは、将来の日本人からカネがとれるから、という話になる。ホントか、それ?!
しかし、年金特会のような出来の悪い連中ばかりではなくて、もっと出来の良い特会もあるわけだ。官僚連中が、自分たちの天下り用に確保した特殊法人金城湯池になっているのである。
それを、著者が竹中大臣に進言し、竹中大臣小泉首相に進言しようとする。しかし、首相にまつわりついている官僚連中に聞かれたらおしまい(つぶされる)ので、竹中大臣小泉首相と二人きりの時を狙い、ようやく進言した。
「ほんとか!」小泉首相は驚いたが、あとは「出せ」で終わりである。こうして、いきなり剰余金が20兆円も転がり出たのだ。

もちろん、このような剰余金にも理由がある。企業の剰余金=内部留保と同じで、事業継続のためには、或る程度の資本をもっていなければならない。しかし、その「或る程度」が問題だ。その基準がなかった。
今は、総事業費の1割を超えない、と決められた。この事件があるまで、剰余金はいくらでも貯め放題、闇の中だったんである。

日本の公的資本は、GDPの10%に及ぶのだが、そんな先進国はない。なぜなら、そんなことをすれば、それだけ官が民のカネを固定することになり、カネのまわりが悪くなる。諸外国は半分以下である。
日本の場合は、為替操作や景気対策のために、これだけの金額が必要だという説明がされている。
基礎経済学では「国際金融のトリレンマ」すなわち、『固定相場制』・『独立した金融政策』・『自由な資本移動』の3つの政策は同時に実現することができないという原理原則がある。
日本の場合は、当たり前だが変動相場制をとっている。従って、金融政策は為替相場を反映したものにしかなり得ない。厳密な意味で独立した金融政策はムリなので(つまり、グローバリズムに対抗するなんてあり得ないことで、鎖国するしかない)ある。
ここでノーベル賞をとった「マンデル・フレミング理論」を著者は紹介するのだが、変動相場制においては財政出動は効き目がない、ということである。財政出動すれば、そのまま為替変動となって他国民を富ませるだけなのだ。
いまだに「緊急経済対策」なんていっているのだが、はてさて、駆け出しの経済学で習う話をなんで聞かないんですか?となる。

評価は☆☆。読みやすいし、そもそも我が国のいかに官僚が食い散らかしているのか、つぶさに知るための格好の手引きでしょうなあ。オススメしたい。

で、結論なのだが、早い話が著者は「上げ潮派」なのである。財政再建派なんて、今の我が国情勢を考えたらあり得ないだろうということだ。
私自身も、何度かこのブログで表明している通り、基本的に「上げ潮派」支持なのである。
少なくとも、経済理論に基づいて判断する限り、不可避の結論なのだけど、そういう人たちは旗色が悪いね。

次回総選挙で自民党は下野することになるように思うが、この際だから、ちゃんと政界再編をして「大きな政府」対「小さな政府」できちんと議論をしてもらえないものか、と思う。
小沢さんは、もともと「小さな政府」を主張していた人だが、人気取りのために「ただのばらまき派」に堕してしまったように思える。機会主義者だろう。

まともな経済のわかる政治家が出てきて欲しいと節に願う。与○野さんって、ありゃ単に財務省受けが良いだけの人ですぜ。