Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

月旦

自民党総裁選で、5人の候補者が出揃った。
麻生氏の当確で、あとの4人は「枯れ木も山」とか「次の次狙い」というあたりが、一般的な見方なんだろうと思う。
しかし、この5人は、それぞれ政策が異なっていて、そういう目で見ると面白い。

まず、与謝野氏だが、この人は「財政再建派」別名「財政タカ派」である。政府の財政再建のために、増税も辞さない(とりあえず消費税10%はキマリか?!)という論者だ。しかも、無派閥、本人の年齢的にも「次の次」はないと思う。
ある意味で、目先の人気取りに右往左往しない、見上げた政治家である。
ただ、問題は、今の状況からして「増税も辞さず」を公約して民主と戦えるか?ということがある。また、諸物価高騰のおり、財政再建のために消費税が上げられるか?
一番良いのは、物価高騰+消費税上げ分を「賃上げ」してインフレにしてしまうことだが、そのためには金利を上げなくてはならないだろう。そうすると、政府の国債利払いも増えるから、財政再建はまた遠のく。なにしろ国公債800兆円なのだから(汗)金利が上げれば政府も困ってしまうのである。このような政策的矛盾のなかで、素早い判断をしなければならないわけで、あまり政策的自由度がない。
与謝野氏の基本的考え方を支持する人であっても、現下の状況を考えると、諸手をあげて賛成しにくい状況ではないか。

次に、小池氏。「政界風見鶏」の印象が強く、あまり好かれないところは不幸である。(自業自得か)しかし、この方は、実は政策的にはサッチャーばりの鉄の女で「上げ潮派」に属する。
たとえば、社保庁の標準報酬月額のごまかし事件で、他の候補は「社保庁ゆるさん」的な国民受けコメント(?)に終始したのに対して、小池候補だけは「このような現象が起こった根本的制度の再検討」をあげていた。
現状の年金のように、会社が天引きする制度では、本人がいくら払っているという意識が薄い上に、給与明細を経営側が偽造してもわからない。だから制度的にいくらでも社保庁と経営側が「ぐるになる」ようにできているのである。
そのほうが得だと思えば、人間はそのように動いて当然である。いくら倫理を説いても、倫理は人によって異なるし、立場が違えば利害は違う。だから制度なり法があるのである。ここで「人でなく制度」をあげた小池氏は、やはり筋金入りの上げ潮派哲学の持ち主だろう。
上げ潮派の主張は、増税よりも構造改革優先である。「構造」というのは、それぞれの人間に倫理とか良識を求めない(基準が人によって異なるから)人は仕組みの中で得になるように動くのが当然という考え(構造主義)である。
しかしながら、現状の「諸悪の根源は小泉」というマスコミバッシングの中では、かなり旗色は悪いだろう。

石原氏も、上げ潮派と言われているが、やはり構造改革路線である。
このあたりが「構造改革派」のまとまりがないところで、同じ事なら候補を一本化すれば良いんだが、町村派の小池氏と山崎派の石原氏で一本化できないのだ。そんな有様で、本当に構造改革なんてできるのか?という疑念を持たざるを得ないところであるが。
山崎派としては、ここらで「次」の領袖を立てておかないと都合が悪い。山拓さん、次は「山崎先生」でなく「山崎氏」になる公算が大だ(苦笑)また比例でなんとかするのか?
ついでに言えば、石原氏も若手と言われつつもう50。ぼちぼち、と思ったこともあるだろう。
これも「次の次」狙い。
構造改革派としては、もうひとつ腰が据わらず、その路線の支持者からみれば小池氏に劣ると思う。坊ちゃんだから、したたかさに欠けるのである。
二代続けて「坊ちゃん政治家の突如降板」を目の当たりにした国民の視線からすると、ちょっと、、、じゃなかろうか。

つづいて石破氏。この人の出馬はサプライズだ(笑)もともとカネがないので有名なのである。
ご存じの通り防衛族で、総理を狙う位置にはない、というのは大方のみるところ。津島派に、他に人材がいないという事情もあったか。
早々に支持に動いたのが、島根の竹下氏に岡山の橋本氏。石破氏は鳥取だから「中国連合」というのが実態だろう。
政策は、必然的に「地方再生派」となる。
財政出動を指向する意味では、官僚受けも悪くない。つまり、マスコミ受けも悪くないのである。
公務員制度改革をやった安倍氏を筆頭に、実は官僚をたたくと、報復にマスコミにリークされる構造があるからだ。日本の大手マスコミは、実は官僚の側面支援隊である。
ひょっとして、さらなるサプライズ(!)があり得るのは、この人だろうか。守旧派なのに、防衛庁改革のおかげで改革派ぽいのもプラス材料だろう。

最後に、大本命麻生氏。育ちの良さを感じさせない「べらんめえ」口調と、特定アジア諸国に対しても強気な姿勢で人気である。
現在の状況で、民主小沢氏と雌雄を決する勝負ができそうなのは、正直この人しかいないだろう。歯切れの良さで、論戦になれば相当強い。筋からいえば坊ちゃん政治家ではあるが、弱小派閥で苦労してきたので、逆境に強そうなところもプラス材料だ。
ただ、気がかりはある。
そもそも、小沢氏の政策は「構造改革」である。「日本を普通の国に」と言い出したのも小沢氏。
で、その小沢氏がやりたかった改革を、とっととやってしまったのが小泉氏という関係にある(苦笑)対抗上、小沢氏は、旧来の主張を変えて、地方再生派に回ってしまっている。
小泉辞任後の「すべて小泉が悪い」マスコミ論調にのって、構造改革=悪となっているので、機会主義者の小沢氏は主張を変えた。「政権さえとれれば何でもいい」のである。決して馬鹿にはできない。そういうところが小沢氏の強さである。
麻生氏は、地方再生派で、構造改革には比較的冷淡だ。
構造改革」といえば、今はマスコミから叩かれるので、それは禁句になっているのだが、潜在的な改革支持者は相当多い、と私は思うのだが、その層をうまく取り込めるのはどちらか?
「どっちもなあ。。。。」と思った構造改革支持の国民がどちらにつくかで、実は勝負が決まるだろう。

前回衆院の小泉旋風は、地方の自民信仰が生きている中で、構造改革が実は都市重視政策だったので、両方で大勝できたことが大きかった。その後の構造改革で、地方へのパイ配分が減少したことで、地方の反乱によって参院で大敗、自民党は没落した。ここで地方に再度重点をおくと、逆に都市部に多いと思われる改革支持層を逃して失点する可能性もある。都市と地方、いったいどちらを主戦場として戦うか?
戦術論的にいえば、小沢氏は「地方」で戦う以外にない。麻生氏は、政策的には「地方重視」だが、支持層は都市に多いように見える。これで、地方で五分、都市で勝利、全体として戦略的勝利というのが麻生氏の狙い。逆に、小沢氏は、地方で勝利、都市部で五分に持ち込めば勝ち。
麻生氏の地方再生政策が、都市部での票の伸びを欠く結果となれば、地滑り的に自民は大敗する。だから、都市部の集票装置である公明を切れない。しかし、麻生氏の支持層を考えると、あまり公明重視を打ち出せず。。。実は、厳しい選択だろうと思う。
今は、総裁選の風で麻生氏は急浮上しているが、いざ選挙が始まれば、また右嫌いのマスコミが一大ネガティブキャンペーンを張るだろう。
麻生氏は、民主党ではなくて、マスコミに勝てないといけないのが現実だ。

などと。
つい柄にもなく「月旦」をやってみましたが。

どっちにしても、政策をわかりやすく、正々堂々と論陣を張って欲しいもんですねえ。まだ選択の余地がある、そう思えば国民も元気が出てくるではないですか。