Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

儀式ではないのだから

麻生首相の所信表明は、見事なものであったと思う。
例によってメディアは「所信表明ではなくて代表質問」と揶揄するが、そもそも2大政党制における所信表明は、このようなものにならざるを得ないのではないだろうか。

だいたい、歴代首相の所信表明は、「儀式」だと思われていた。風穴を開けたのは小泉元首相で「米百俵の精神」を訴えた。「国民に対するメッセージ」としての所信表明を明確にしたのは、この平成の大宰相の功績であると思われる。

安倍元首相は「美しい日本」という理念を語った。これがすっかり逆手にとられ、ことあるごとに「これが美しい日本でしょうか」とやれば良くなってしまった。そういえば、どんな批判ももっともらしく聞こえる、ということである。この日本において、国の理念を語ることはムリなんだなあ、とつくづく思わざるを得なかった。

福田首相の所信表明を覚えている人がいるだろうか(笑)何も批判されなかったので、覚えてもいない人が多かろう。ひたすら民主党にご理解、ご協力を求めるという、一国の首相が幇間のごとき仕種であった。我が国のマスコミは、与党議員であっても民主党にすり寄ると、何も言わないという特質を有している。まことに不思議である。

麻生首相は、安倍政権以来首相の側近にあって、これらの有様をつぶさに見てきたのである。
その積み重ねがあって、あのような所信表明になったと私は見る。

まず、日本人よ元気を出せ、という基調メッセージは歴然としている。これを無視して「代表質問」よばわりはなかろう。ただし、安倍氏のような理想型は描かなかった。そうすれば、いかなる仕儀となるか、よく理解しているのである(苦笑)。

その上で、吃緊の課題を5点、列挙した。

(1)国会での合意形成方式確立の是非
(2)補正予算の是非
(3)消費者庁創設の是非
(4)日米同盟と国連のプライオリティー
(5)インド洋での補給活動の継続の是非

これは、いずれも参院における民主党の「強行採決」によって否決された問題、または否決が予想される問題である。(なぜ、自民党の多数決を「強行採決」と表現して、民主党のそれはそう呼ばないのか?不思議でならぬので、あえてこのように書いてみた)
安倍-福田と続いた政権の有様をみておれば、この5点がまさに争点である、そう指摘してどこに間違いがあるのであろうか?

そもそも、現実として、今や国会は自民-民主という2大政党によって左右されているのであり、そこで合意できるかできぬか、それによって国会の命運が決まるのである。
民主党も、今や参院で多数党なのであり、いわゆる「ねじれ国会」によって国政が停滞しているという批判はあろう。
もちろん、それが我が国にとって必要なことであれば、いくらでも「ねじれ」ているほうが良い。しかしながら、そもそも反対の原因はどこにあるのか、何を求めているのかをハッキリしてもらわぬと、ただ「ねじれています」では、さっぱり訳が分からぬではないか。

このまま、「政権政党」になる可能性も充分ある民主党に対して、いたずらな言葉遊びに流れず、具体的な課題に対する考えを正しておくのは、今や国政において必要不可欠のことであると信じる。

民主党は、麻生首相の「5つの争点」に対して、明確な回答を示すべきである。
そうすれば、国民は、各々の言い分を聞いて、どちらがより好ましいか、きちんと判断する材料を持てようと思う。

我が国は民主主義の国のはずである。
国民に判断するための材料を提示することが、どうして必要でないことがあろうか。
批判も良いが、そうではなく、すでに政権を争う立場にいるものは、己の意見を明確にする義務があるだろう。

麻生首相の所信表明は、そういう意味で、新しい段階に入った日本の政治に対応した、正常なものだ。「過去のやり方にそぐわない」からと言って、これを排するべきではないだろう。
誰の目から見ても、今までの国政のあり方は、考え直さなければいけない時期なのだから。