Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる

法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる」奥村佳史。

日本の法人税はだいたい40%とされている。この「だいたい」がくせ者で、色々な例外があったり、また地方税自治体によって違いがあったりするからである。
国際的にみると、あの高福祉で知られる北欧だって、日本よりは安いようだ。菅政権は、北欧の高負担だが高福祉、そして経済成長力の確保というモデルを手本にするつもりらしく(とっても、北欧モデルそのものは、高負担に耐えられなくなりつつあるが)さっそく法人税の税率ダウンを言い始めたのだろうと思う。
まんざら選挙対策ではないことを祈りますが、ま、世の中に女心と民主党の公約ほど変わりやすいものはないというワケで(苦笑)

さて、著者は冒頭に、こんな例をあげる。
ある会社のA君が、所有ビルの防水設備工事の稟議書を上げる。この工事を行えば、建物が一挙に素晴らしいものに生まれ変わるという、ほとんど工事会社の営業マンのような熱烈な稟議書である。で、これは却下になる。
その後、同僚のB君が、同じ工事の稟議書を書くが、彼の稟議書はそっけなく、単にこの工事は建物の雨漏りを防ぐ以上の価値がないようなものだった。そして、この稟議は許可されたのである。
A君の力作の稟議が通らず、B君のそっけない稟議が通ったのは何故か?その秘密は法人税にある。
A君の稟議だと、工事は資産として計上される。すると、これは何年もかかって減価償却されることになる。
それに対して、B君の稟議だと修繕費の扱いになる。これだと損金になる。
会社は、節税を考慮して、支払う税金が増えるA君の稟議を通さず、B君の稟議を通したわけである。
常識で考えれば、力作のA君の稟議が通りそうだがそうではない。法人税を理解することで、営業マンの仕事の仕方だって変わるだろうと著者は言う。
なるほどと思う。たいへん面白い例である。

法人税について、多少の関心を持つ人ならば、誰もが読んでも損はない内容である。
おおいにお奨め。
ただし、プロ向けではないのはもちろんだが、「法人税ってなんですか?」の人が読んでも分からないところも多いと思う。
著者が悪いのではなくて、日本の税法自体がわかりにくいのだ(苦笑)
よって、評価は☆としたい。

本書の中に、思わずニヤリとする指摘がある。
共産党佐々木憲昭議員がホームページに「日本の大銀行は、みんな税金を払っていません!大企業優遇だ」と批判している。
これに対して著者は言う。たしかに調べたかぎり、佐々木議員の指摘は事実である。しかし、それは法人税法の既定により、7年間の赤字を持ち越しできるからである。
これら大銀行は、不良債権処理のために、過去に多額の赤字を計上しており、利益からその赤字を差し引くために無税になっているのである。
たとえば、もしも利益が出たときに40%の税金をかけ、赤字のときは単に無税にする。そうすると、企業は常に黒字とは限らないので、黒字の年だけ40%の利益をもっていかれては、数年間を通算したときには利益に対する実効税率は40%を遙かに超えて高いものとなるだろう。
一方で、毎年黒字の企業は、数年間を平均しても40%の税率となる。
さて、そうなるとどうなるか?数年間を通算すれば、なんと、赤字だったり黒字だったりする企業に対する税率のほうが、毎年黒字の企業に対する税率よりも高いことになってしまうのだ。
「赤字転落企業に対する税率の方が高くなるということに対して、弱者保護をうたう共産党はどのように考えているのだろうか?」
ものの理屈というやつは、時に思わぬ真実をあぶり出してしまうのですなあ。