Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

どこで転換するか

もう終わっちゃった都知事選(笑。だって、すでに結果はでたも同然)はともかくとして、気になるのは景気の先行き。
先月末に、甘利経産相は「Jカーブ効果が発現しない理由」として
新興国経済の失速
・企業が輸出価格を下げていない
・生産拠点の海外移転
をあげました。

Jカーブ効果」とは何ぞや?というと、政府のいわゆる「異次元の金融緩和」によって、平たく言えばインフレになり景気が良くなる(だろう)というわけですが、つまりは「輸出ドライブが日本経済を引き上げる」までにはタイムラグがある、そのタイムラグをJカーブというわけです。
直線的に良くならなくて、ちょっと遅れて波がくるから、です。

ところが、株価はあがったものの、実体経済は一向によくならない。
円高で輸入価格は上がったが、賃金の上昇にはつながらない、つまり消費が伸びないわけです。かえって生活は苦しくなってしまいますね。

「ほらみろ、原発再稼働だ!」というわけですが、実は、話はそんなに単純ではないように思います。

2008年 輸出 81兆 181億円  輸入 78兆9547億円
2013年 輸出 69兆7877億円  輸入 81兆2622億円
(輸出約11兆円減)     (輸入約2兆円増)

昨年度の貿易収支は約11兆円の赤字ですが、原発停止による燃料費の増加はだいたい4兆円もみればいいほうです。2008年よりも実質輸入額が減っているのですが(ずっとデフレだったから)それよりも輸出のほうが深刻ですね。
原発再稼働しても、貿易赤字は解消しない、これ自明じゃないですか。

たしかにアベノミクスで、日本企業の利益は上がりました。
しかし、輸出数量は上がっていない。つまりは、円高によるコストダウンを全部利益にしちゃったわけです。韓国ウォンあたりが上がっているので、相対的にこちらは安くなりますからね。

トヨタ自動車が昨年800万台を販売しましたが、そのうち国内生産が200万台、海外生産は600万台ということですから、国内生産分はほぼ国内販売であてられます。実質的な意味では、トヨタはすでに「日本の会社」ではない。

日本は、これからますます少子高齢化がすすみ、4月からは消費税を上げます。ほかに財源がないですからね。
しかし、この構造から考えて、原発を再稼働しようが、Jカーブ効果が起きて、日本のGDPが再び上向き、税収が増えて財政再建できる、という話はありそうもないと思います。
どうしたら、そんなストーリーを考えられるのでしょうか?

ですから「GDPを増やして成長=みんな幸福」というストーリー(教義)を、どこかで転換しないと、日本はやっていけなくなるんではないか、と。

貿易収支の連年を見ていただくと分かりますが、貿易黒字はずっと2000年代から落ちてきています。
原発停止で、それは「早まった」けれども、そのままでも「時間の問題」2020年には赤字だったのです。

そもそも、貿易収支の赤字や黒字自体は、国富でもなんでもありません。
小学校の生徒が「こんなに貿易黒字があるんだから、それなら学校を建て直してほしい」とかいって、その横でうなづいている先生をみて、私はがっかりしました。
貿易黒字は、実際にあるお金じゃなくて、単なる会計上の便宜にすぎないのだから、お金はない。貿易黒字は企業や家計の「黒字」とは意味が違うんだよ、という経済学の教科書の初めの5ページに書いてある程度の話をしなきゃあかんのではないか、と思ったりします。

まあ、そんなところです。

何をやっても、すぐに新興国にキャッチアップされてしまうのですから「開発立国」も難しいのです。
何か違う方策が必要なんだが、と思っています。
もやもや、としていますけど。