Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

サクリファイス


希有なロードレース・ミステリである。

サクリファイスとは「犠牲」である。
自転車ロードレースをご存じの方は、このタイトルからすぐ「アシストレーサー」のことだと推察がつくはずだ。
自転車ロードレースでは、いかに勝負所まで「エース」を温存できるか、がポイントである。
そのために、アシスト達は自らの体力を犠牲にして、エースを空気抵抗から守り、場合によっては自らのホイールを差し出しすらする。
エースは、その犠牲の上で、最後のゴールを目指して勝負に出る。
勝負に負けることは、そのために苦しんできた犠牲をも無駄にすることなのである。

物語は、大きな2つのレースを物語りながら、かつてチームに在籍したアシストレーサーが事故で半身不随となった原因に到達していく。
エースを怒らせた事態とは、いったい何だったのか?
そして、同じような苦境に陥ったときに、エースの取る行動とは?といったことが語られる。

評価は☆☆。
おもしろさは無類で、特に自転車好きなら必読だと思うが、そうでない人にも充分楽しめると思う。

ところで、世の中には、このような「エース」「アシスト」の関係は、そこここに見られる。
良きアシストを持たないエースは単独アタックとなり、まず勝てない。
しかしまた、強力なエースを持たないアシストは、働き場所がないのである。

いろいろと考えさせられた。
一言でいえば、人生はなかなか厳しくつらい、ということである。
それは、エースだろうがアシストであろうが、まったく変わりない。