Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

エコ論争の真贋

「エコ論争の真贋」藤倉良。

エコ論争とは、いわゆる「地球温暖化懐疑論」「レジ袋なんか使い捨てろ」というような議論のことである。
巷間話題の武田邦彦教授などが、最右翼であろう。

それらの「エコ論争」について、丁寧に解説しながら、おそらくはかなり中立な記述を目指しているように思う。
たとえば、ペットボトルについて、武田教授の
「ペットボトル1本をリサイクルするには、ペットボトル1本分の石油を使うので無意味」
という批判については
「たしかにそのとおりだが、実際にはペットボトルの再生はシートや繊維が多い。すると、たいへん効率がよい」ので無意味ではない、とする。
ただし、武田教授がいう「リサイクルよりも使わないこと、あるいは再利用のほうが有意義」
については、大いに賛同を示している。

また、ペットボトル輸出についても、武田教授の算定は過大だとしている。しかし、問題はある、という。
(そもそも、国民が税金をかけて回収したペットボトルが輸出されていること自体、国民は知らなかったのだから)

レジ袋についても、マイバックは有意義(ただし、マイバックをすぐに買い換えては意味がない)

どうだろうか。
きわめてまっとうな意見のように思われる。

武田教授のような人は、今まで人が言わなかったことを言うので、少々刺激的に(苦笑)表現しているのは仕方がない面もあるだろう。
真実は、その間にある、というのは、どうやら信用してもよいと思われる。

評価は☆。
読みやすく、かつ、有意義な本である。推薦。

ところで、本書で私が感心したのは、巻末の象牙のくだりである。
アフリカゾウは、かつて象牙のために乱獲された。
欧米の環境団体は、国際会議で、強硬に主張して象牙を完全に禁輸してしまった。
するとどうなったか?
アフリカゾウは減ってしまったのである。

当然、禁輸すれば、象牙の価格はあがる。
密猟者は、見張員に賄賂を贈って、アフリカゾウをどんどん獲った。
そこで、もっと監視を厳しくした。
そうしたら、今度はアフリカゾウは、住民にとっては、たんに畑を荒らしたり、人を襲ったりする害獣になってしまった。
象牙が高いころは、貴重な資源なので、みんなで守りながら狩をしていたのである。
で、今度は、一定量だけを、日本や支那に輸出するようにした。
そうすると、ふたたびアフリカゾウは大事にされるようになったのである。

自然を守れ、というのは簡単であるが、その自然とともに生きる人にとっては、そのコストは問題である。
深く考えさせられる話であった。