Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

混迷

安倍総理が訪米となり、TPPに関してどのような議論が行われるのか、注目されている。
ネットの論調を見ていると、

保守(右の人たち)・・・農業自給率が下がる、アメリカが好き勝手に経済支配をする、反対
左翼(だいたい反米)・・アメリカがやるから反対(笑)
市場原理主義者・・・関税を下げるので賛成
財界・・・輸出で儲かりそうなので賛成

といったあたりであろうか。
国内二分といいたいが、自民党を見る限り、反対者が圧倒的に多いようである。農村票を考えれば、当然である。

しかし、私は、かなりこの議論には懐疑的だ。正直にいえば、TPPにもメリットがあると思っている。
ただし、それが明らかにデメリットを上回るものかどうか、それはわからない。

まず、農業に対する影響であるが、農水省の試算は意図的で正しくない。
米国のコメ価格を、わざと10年前の水準においている。
現在、日本のコメに対抗するカリフォルニア米の価格は、日本米と1割くらいしか変わらない。コシササを除いた標準米の価格では、むしろ日本米のほうが安い。よって、日本の圧倒的多数を占める米作兼業農家に与える影響はほぼない、と私は見る。
なお、たとえば花卉栽培などは、すでに関税ゼロで充分に成り立っている。ただ、これはカロリー統計上は当然ゼロなので、自給率には反映しない。
自給率をカロリー計算でなく生産額ベースでもっていけば、60%を超えるのは周知のとおり。

明らかにダメなのは、沖縄の砂糖と北海道の酪農。これは難しい。現状の関税率が高すぎる。
そのほかにはコンニャクイモなどもそう。
ただし、その関税は肝心の農家へ還元されず、圃場整理や農道整理などの公共事業および外郭団体の給料に消える。だから、この仕組みがあっても、肝心の農家は何年たっても強くはならない。永久に保護が必要である。

一方、輸出はどうか?
これは増える。大手企業は海外生産にシフトしており関係ないとの論調もあるが、全部海外に行ったわけではない。
さらに、貿易統計上では、支那が最大の貿易相手国なのだが、製品の最終輸出先では依然として米国が最大の貿易相手なのである。日本メーカーは、日本で重要パーツをつくり、支那で組み立て、米国へ販売している。関税が下がれば、米国への直接輸出が戻る部分があるので、好影響になる。支那の政治リスクを考慮すると、国内回帰にプラスの政策といえる。

問題になるISD条項はどうか?
これは、確かに国内制度に対して、米国の介入を招く可能性がある。
しかしながら、たとえば薬の認可問題や、バター不足のときの輸入問題で明らかなように、日本の規制には監督省庁の外郭団体がビッシリと取り囲んでおり、これらのシロアリが汁を吸っている。この制度を変えるのは、日本自身の手では不可能である。(できてたら、こんなことにはならない)外圧頼みによる改革という意味では、良い方向へ動く可能性もある。
というか、現状の仕組みを温存するほうが危ないのではないか。

で、いろいろ考えると難しい。

難しいが、日本が民主主義である以上、国民の票gがとれる政策をとらねばならぬ。当然である。
だから、結局は反対になるのではないか。

その結果、相変わらず見えないコストがはびこる社会のままになるわけだ。
見えないコストがいけないのは、そこにはリスクがないので、能力がある人は、そちらにいくことが最も合理的になってしまうことである。
それが、本当は、もっとも国力を下げてしまう要因なのではないか、と思っている。

役人は、なるべく無能な人が仕方なくなる、くらいの国のほうが良いと思うのだが。