Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ドバイにはなぜお金持ちが集まるのか

「ドバイにはなぜお金持ちが集まるのか」福田一郎

最近、ドバイに関心がある。
なぜかって?そりゃあ、もちろん、世界最高賞金額の競馬があるからですよ(笑)

そもそも、サッカーワールドカップのおかげでUAEアラブ首長国連邦という名前をやっと憶えたところで「ああ、ドバイって、UAEの中の国なのね」てなもんで。
実は、ドバイがどんな国か、まったく知らなかった。
想像で、たぶんオイルマネーでじゃぶじゃぶ、派手な高層ビルを建てまくっている砂漠の国、というようなイメージを持っていた。

ところが、本書を読んでびっくり仰天した。
なんと、ドバイには、石油が出ないのである!
ドバイの繁栄は「5年間でGDP2倍」というくらい、急スピードで進んだのであるが、しかし、産油国でもなんでもない。

では、ドバイの繁栄は、どこに秘密があるのか。
まず第一に、税制である。
なんと、ドバイは「無税国家」なのである。

石油収入もないのに無税で国が成り立つものだろうか?
ところが、成立する。
実は、この「無税」には、カラクリがある。
実際には、ドバイの法人登記は毎年必要で、その登記手数料が国の収入になる。
さらに、ドバイでは、外国人が過半数を支配する法人をつくれない。
必ず、ドバイ生まれの人の役員が必要で、彼が社長である。
ところが、もともと遊牧民族の彼が、会社経営なんかに興味があるわけがない。
そこで、ドバイの会社では、ドバイ人が登記上の代表者になって、外国人に名義を貸し、その名義料を取るのである。
ゆえに、ネイティブのドバイ人は、名前貸しだけで別収入を得ることができるわけだ。

そういうわけで、ドバイに法人を持つと、登記料が30万円、名義貸し料が人によっていろいろ、で、まあざっと100万円以上かかる。
しかし、である。
利益を上げている会社にとって、法人税を取られることを思えば、こんな金額はタダ同然である。
よって、ペーパーカンパニーやら投資会社やらがどんどんできて、世界中から資本が流入する。
この金を元手に、ドバイ政府は派手なイベントをやり、大規模な埋め立てをやり、世界一の高層ビルを建てて、一大人工島リゾートをつくる。
世界一の賞金額の競馬をやり、世界で一番美しいスターバックスまでつくる。
かくして、大都会から一歩出ると、たちまち不毛の砂漠がつづくという、なんとも幻想的な人工都市国家が出現したわけなのである。

ドバイの経済発展の歴史は、そもそも中継貿易港として栄えてきた歴史がある。
英国とインドの中継貿易を担ってきたわけだ。
今でもインド人は多いし、アラブ人、出稼ぎの東南アジア人もたくさんいる。
これら外国人のビザは職があることが条件。
ビザ更新時に失業していれば、有無を言わさず強制送還。だから、出稼ぎ外国人のスラム化や生活保護の問題もない。
ドバイは、お金を稼ぎにくるところ、なのである。
どこかの政府も見習うべき要素があるかも、ねえ(苦笑)

評価は☆。
実に面白かった。

世界には、たくさんの国があり、それぞれの国が、それぞれの政策を行っている。
いくら産油国であっても、たとえばナイジェリアなどは、まったく潤っていない。
世界最悪と言われる治安は、輸出する前に「あったはずの石油」が、すべて消えてなくなっているという国柄である。
一方で、このドバイのように、何もなくても栄えている国もある。
すべては戦略の違い、ということである。

日本も、アベノミクスによる大胆な金融緩和策によって、ようやく経済に明るい見通しが出始めた。
一方で、国債価格が下落し、長期利上げの動きが見えるなど、気になる動きもでてきている。
もともと、日本の産業構造は貿易に関しては中立であった。
だから、アベノミクスが「為替安による輸出振興から景気復活に至る」という今のマスコミのストーリーは思い込みによる間違いであろう。
実際には、日本は内需国家だから、内需がよくならなければ景気は良くならない。
金融緩和による内需の振興ができるかどうかが、アベノミクスの成否の分かれ目である。
投資が動き出し、消費が動き出せば、景気は上がるが、その前に利上げが続き、国債発行高が予想を超えてあがると、国の財政が破たんする可能性もある。
実は、安倍政権は、そんなに幅広い選択肢をもっているわけではない。
衰弱死の運命を避けるため、副作用の懸念される新薬を投与して、なんとか起死回生につなげようとしているところが本当だ、と思う。
前回のバブル崩壊と違って、今回は、失敗したら、公的資金の投入で延命することはもうできないのである。

今のところ、新薬は、思い通りの効果を発揮しているが、副作用がでるか、このまま回復に向かうかは、正直なところ、まだわからない。
なんとかこの難局を乗り切ってほしい、と、切に願っています。