Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

パリジャンは味オンチ

「パリジャンは味オンチ」ミツコ・ザハー。

パリに魅せられ、すでにパリ在住が20年以上になり、パリで骨を埋める覚悟をしている著者による素顔のパリジャン紹介。
私などから見れば、パリといえば花の都であり、パリジャン、パリジェンヌといえばスカした紳士とやたらファッションセンスのある女性たち、という印象であった。
で、言うまでもなく美食の町であり、街角のカフェではゆったりとパリジャンたちが談笑しながら、世界に名高いフランス料理をワインとともにつついている、と思っていた。
しかし、本書の紹介するところ、本当のパリジャンは、そんなものではない。
やたらケチで、スーパーに行けば冷凍食品ばかりを買いだめし、皮肉を言わせれば天下一品という、どうも幻滅するような現実が赤裸々につづられている。

まず表題の美食であるが、実はパリには、そんなに旨い店はない、という。
もちろん、ミシュランに出るようなグランメゾンは別、である。
これらの店は旨い。しかしながら、その会計も、相応である。
日本と違うのは、「旨くて安い店」がない、ということらしい。
安い店のひどさは、日本では考えられないレベルだという。ことに、ドライブインだとか、駅の食堂などは最低らしい。
そういわれてみれば、日本の店は、これらの立地の店でも、そんなひどい飯はない。
著者は、東京のほうが本家パリよりも星つきレストランが多いのは「快哉を叫びたくなる事実」だという。
うまいものなら、東京で食え。どうも、そういうことのようだ。

それから、これはパリジャンの一大特徴だと思われるが、とにかく恋愛に関する自由度が半端でない。
20年連れ添った夫婦が離婚、それぞれダブル不倫でした、なんてのは当たり前。
あんまり離婚が多いので、子供たちの半数以上が、血のつながらない親と暮らすことになる。
日本では厳しいイメージがあるが、なにしろ、お父さんお母さんとも実の父母であることのケースのほうが少ないのだから、そちらのほうが珍しがられる始末となる。
で、法律もこれに対応して、「法律婚」なるものがあるらしい。
日本でいう契約婚にあたるのだろうが、入籍がいらず、簡便な届出だけで済むらしい。
メリットは、もちろん解消の手間がかからないこと。
私は、かねてから日本の結婚制度は、制度疲労によって崩壊するだろうと考えているのだが、すでに実例があった、というわけである(苦笑)。
パリジャンにとっては、私の説なんか、なにをいまさら、、、の話なのである。

評価は☆。
やはり、外国は、イメージだけではわからないもののようである。
歴史や文化の違いとは、そういうものなんでしょうなあ。

実は、最近、映画「レ・ミゼラブル」を見た。
あそこで描かれている当時の下層階級の暮らしの悲惨さは、たしかに革命の必要性、マルクス主義胞体の必然性を感じさせるものであった。
そこで興味深いことであるが、実は、当時のパリの子供を実父母が養育する例は、せいぜい2~3割にすぎず、ほとんどの子は養子、里子に出されたらしい。
貧しい暮らしでは子供の養育はままならないから、当然の帰結ではある。
そして、母親は、子供を誰かに預けてしまうと、また別の男と付き合い、また違う子供を身ごもるのが常であった。
早い話が、現在の一夫一婦制度自体が、よく指摘されるように、産業革命以来、労働力の主力となった労働者の男になるべく多く女をあてがうという社会主義的な政策だったことがわかる。
今の社会主義者は、多夫一婦制を主張する人までいるようであるが、国策としての一夫一婦を否定すると、女性の公平配分という原則も崩壊する。
もちろん、女性は財産ではないのであり、公平に配分する必要などないのであるが、なんとなく、18世紀のフランスに戻る雰囲気がしなくもない。
それが進歩というのか、私にはとんとわからないが。

まあ、どっちにしろ、私には分かりかねる世界の話ではありますなあ(苦笑)