「帝国海軍の勝利と滅亡」別宮暖朗。
大日本帝国海軍を、日清戦争(黄海海戦)から日露戦、大東亜戦と滅亡までを、その中枢である山本権兵衛と山本五十六に焦点をあてて描いている。
著者曰く、帝国海軍は二人の山本(権兵衛と五十六)において、その生誕と栄光から滅亡までをカバーできる、という。
著者曰く、帝国海軍は二人の山本(権兵衛と五十六)において、その生誕と栄光から滅亡までをカバーできる、という。
まず「栄光」であるが、山本権兵衛の傑物ぶりを描く。
造艦思想は当時の先端をいき、海軍についての見識も一流であった。ゆえに、陸軍の大物、山形有朋はよく山本に譲歩している。
日本は海軍国ゆえ、国防予算も陸海折半にする慣例をつくったのも山本。もともと、長州閥は陸軍で、陸軍優先であったのを改めさせた。
また、日英同盟の推進にも一役買っている。
当時の小村寿太郎は、日英でなく日露同盟の議論もあったところ「露の歴史をみるに、条約を簡単に違約する。いっさい信用ならない。英国は、奸智であるが、違約はない」として、日英同盟を締結。
これを山本は「四方を海に囲まれた海軍国たる日本が、陸軍国たる露と同盟しても国益なし」と助言している。
造艦思想は当時の先端をいき、海軍についての見識も一流であった。ゆえに、陸軍の大物、山形有朋はよく山本に譲歩している。
日本は海軍国ゆえ、国防予算も陸海折半にする慣例をつくったのも山本。もともと、長州閥は陸軍で、陸軍優先であったのを改めさせた。
また、日英同盟の推進にも一役買っている。
当時の小村寿太郎は、日英でなく日露同盟の議論もあったところ「露の歴史をみるに、条約を簡単に違約する。いっさい信用ならない。英国は、奸智であるが、違約はない」として、日英同盟を締結。
これを山本は「四方を海に囲まれた海軍国たる日本が、陸軍国たる露と同盟しても国益なし」と助言している。
ワシントン条約にかこつけて、米国の圧力が強まり、日本は日英同盟を破棄する方向になる。
このとき、英国大使は時の外務大臣、幣原を散歩に誘い、銀杏の木の話をする。
幣原は、「なんだ、この大事な時に、銀杏の話ばかりして」という。
銀杏は、世界的にも珍しい木であり、古代の姿をそのまま残している。英国大使は「古くからのものを、そのまま残す」というサインを幣原に送っていた。
英国大使の生物学趣味をまったく理解していなかった幣原は、日英同盟を破棄し、支那への譲歩に終始する外交を繰り返し、かえって事態は悪化する。
このとき、英国大使は時の外務大臣、幣原を散歩に誘い、銀杏の木の話をする。
幣原は、「なんだ、この大事な時に、銀杏の話ばかりして」という。
銀杏は、世界的にも珍しい木であり、古代の姿をそのまま残している。英国大使は「古くからのものを、そのまま残す」というサインを幣原に送っていた。
英国大使の生物学趣味をまったく理解していなかった幣原は、日英同盟を破棄し、支那への譲歩に終始する外交を繰り返し、かえって事態は悪化する。
そして、最後に山本のハワイ攻撃案である。
山本は、日本の勝つ道を「海戦へき頭、一日で勝利を決する」奇襲しかないと思い定めていた。
この「ハワイ奇襲」に山本は固執し、結局、日本は日米開戦の火ぶたを切る。この時点で、すでに負けであった。
米国と開戦さえしなければ、帝国海軍は滅びずにすんだ。
まさに山本五十六こそ、日本を滅亡のふちに追い込んだ犯人である、、、と。
山本は、日本の勝つ道を「海戦へき頭、一日で勝利を決する」奇襲しかないと思い定めていた。
この「ハワイ奇襲」に山本は固執し、結局、日本は日米開戦の火ぶたを切る。この時点で、すでに負けであった。
米国と開戦さえしなければ、帝国海軍は滅びずにすんだ。
まさに山本五十六こそ、日本を滅亡のふちに追い込んだ犯人である、、、と。
日本海軍が艦隊決戦思想に取りつかれ、シーレーン防衛をおろそかにしたのは事実である。
もともと、対米6割の主力艦と7割の補助艦では、シーレーン防衛はできなかった。
日本海軍の基本方針は、山本の言うとおりに短期決戦で、それ以外に方策はなかった。
もともと、対米6割の主力艦と7割の補助艦では、シーレーン防衛はできなかった。
日本海軍の基本方針は、山本の言うとおりに短期決戦で、それ以外に方策はなかった。
私も、日本海軍が勝つ方法を考えて「対英開戦だけ行う。米国とは開戦しない」しかない、と思ったことがある。
しかしながら、もしも日本が対英開戦した場合、米国が参戦してこないケースがあり得るだろうか?
そもそも、米国からは厳しい経済制裁(ABCD包囲網)を受けている。
おそらく、その中で対英蘭開戦したら、米国は必ず開戦を決意するような気がする。これは、机上では成立する案で、実際にはムリではないかと思う。
海軍の「英米一体論」を、山本の責任ばかりにできないと思うのである。
しかしながら、もしも日本が対英開戦した場合、米国が参戦してこないケースがあり得るだろうか?
そもそも、米国からは厳しい経済制裁(ABCD包囲網)を受けている。
おそらく、その中で対英蘭開戦したら、米国は必ず開戦を決意するような気がする。これは、机上では成立する案で、実際にはムリではないかと思う。
海軍の「英米一体論」を、山本の責任ばかりにできないと思うのである。
そもそも、支那事変を解決できないのに、事変解決のために英米と開戦する時点で、大きく間違っている。
大東亜戦争は、基本的に支那事変の解決に失敗したことから発生しているので、海軍はたしかに愚かだったが、もともと陸軍の失敗のしりぬぐいではないかと思う。
陸軍が、大きな口をたたけたものではないであろう。
大東亜戦争は、基本的に支那事変の解決に失敗したことから発生しているので、海軍はたしかに愚かだったが、もともと陸軍の失敗のしりぬぐいではないかと思う。
陸軍が、大きな口をたたけたものではないであろう。
本書の指摘の中で、鋭いと思ったのは兵棋演習の弊害であった。
日米がもし戦えば、事前の予想で日本の負けである。
ところが、真珠湾奇襲で、日米の兵力差は逆転する。よって、日本の海軍指導部は「米国が仕掛けてくるはずがない」と思ってしまう。
兵棋演習すれば米国の負けだ、わざわざ負けに米国がでるはずがない、、、かくて、ミッドウェイで「突如出現」した米空母にしてやられるのである。
これぞ「官僚主義」のもっともな弊害であった。
賢い役人は、先がみえすぎるのである。
日米がもし戦えば、事前の予想で日本の負けである。
ところが、真珠湾奇襲で、日米の兵力差は逆転する。よって、日本の海軍指導部は「米国が仕掛けてくるはずがない」と思ってしまう。
兵棋演習すれば米国の負けだ、わざわざ負けに米国がでるはずがない、、、かくて、ミッドウェイで「突如出現」した米空母にしてやられるのである。
これぞ「官僚主義」のもっともな弊害であった。
賢い役人は、先がみえすぎるのである。
今度こそ、判断を誤らないでもらいたいと思うのですなあ。