Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

フリーメイソン

フリーメイソン荒俣宏。副題は「秘密」を抱えた謎の結社。

フリーメイソンというと、日本では陰謀論者に大人気である。
イルミナティがあって、実は世界を破滅させようとしている、真の支配者のロスチャイルドの母体だとか(苦笑)。
しかし、そういう怪しげな陰謀論(ムーとかいう娯楽雑誌があったな)のレベルであればともかく、普通の日本人にはフリーメイソンなんてなじみがないものである。
私だって、モーツアルトの「フリーメイソンのための葬送曲」くらいしか知らない。(ちなみに、これは名曲)。

あの博覧強記で知られる荒俣宏の本であれば、間違いなかろうということで読む。
おかげで、フリーメイソンについて、おぼろげに理解できた。

まず、フリーメイソンの目的自体は「友愛」で、特に世界制服を目標としていない(苦笑)。
フリーメイソンの起源が石工であって、古くエジプト時代にさかのぼる、というのも、後世つくられた話である。
フリーメイソンの売りは「秘密結社」である。
秘密結社というからには、ナニカ秘密を持たないといけないのである。
なぜかというに、フリーメイソンの中で階級が上がると、それに応じて秘密が知らされる、という仕組みを持っているからだ。
それ以外の人には、口外してはならないのである。
このあたりの仕組みは、初期にはなくて(階層も3段階しかなかった)のちにスコットランドのロッジ(本部)で33階級の上位階級が設定されたときに、つくられたものである。
つまり、一般会員は知らない秘密、ということになっていたのである。

フリーメイソンは、友愛、相互扶助、社会貢献というフランス革命的な価値観を持っていたので人気になってきたのだが、これに神経を尖らせたのがカトリック教会である。
カトリック教会の右派はイエズス会であるが、プロテスタントの出現もあって、カトリックの中でも司祭の権力を絶対とする封建的な体制が嫌われはじめた。
そこで、カトリックイエズス会を弾圧し、大衆に融和的な姿勢を見せることにする。
窮地に追い込まれたイエズス会側が「社会を堕落させようとして陰謀をめぐらしているのはフリーメイソンだ」と言い出した。
これが、フリーメイソン陰謀説の始まり。
つまりは、カトリック本部にたてつくわけにいかないイエズス会スケープゴートである。
この話は、カトリック教会にとっても悪い話ではなかったので、カトリックはこれを放置する。

ついでにいうと、ドイツで、秘密結社を作ろうとしていたアダム・ヴァイスハオプトという男が、秘密結社の中に入って会員を勧誘するという方法を思いつき、実行したのがイルミナティ
この方法は大うけした(もともと、秘密結社大好き人間が集まっているから)だが、後世、カトリック教会ににらまれて終わってしまう。

フリーメイソンカトリック教会は折り合いが悪かったわけで、新教徒が大量に移民した新大陸アメリカの創設期メンバーにもフリーメイソンの会員が多かった。
なので、1ドル札にもフリーメイソンのマークがある。
アメリカの建国理念「自由」「自治」「自立」などというあたりに、フリーメイソンの影響がある。

評価は☆。
よくも調べたものだ、というくらいに、細密な記述が続くので、少々退屈にもなる。
とはいえ、これだけの出典を並べられると、フリーメイソンに対する「おどろおどろしい秘密を握っている秘密結社」という見方は出来ないもので、ただのオッサンたちの同好会、クラブ活動以上のい意味は見いだせない。
そんなものなんだろうな、と思う。

秘密結社という割には、有名すぎるし。
「有名な秘密結社」なんて、矛盾である(苦笑)。

ちなみに、日本にフリーメイソン陰謀論を持ち込んだのは四王天陸軍中将で、有名な偽書シオンの議定書」を流布した。ナチスドイツのかたをもちたかったのだが、直接やると「ナチかぶれ」と言われるので、このような方法をとったらしい。

陰謀論がどうして人気があるかというと、その「分かりやすさ」に秘密があると思う。
言うまでもなく、世の中には不正義、不条理なことがたくさんあふれている。
なんでそうなっているのか?というと、世の中の仕組み全体が複雑に絡み合って、結果そんな感じなんですわ、となる。
これは、分かりにくい。
そこに「悪の組織ショッカーがあるからです」といえば、話はシンプルである。
悪のショッカーを倒しさえすれば、世の中に平和が訪れるわけだ(笑)

どうしてもショッカーが必要なので、それをイルミナティと言ったり、ある人は右翼勢力だと言ったり、あるいは共産主義だといったり、米帝だと言ったりする。
みんな、ショッカーが欲しくてたまらない。
世の中を、シンプルに理解したくてたまらない。

しかし、世の中は、ほんとはもっと面倒くさいものだと思う。
実に、たまらん話ですなあ。