Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ひとりビジネス

「ひとりビジネス」大宮知信。

私は、現在「ひとりビジネス」をやっている。一応会社であり、ふと気が付けば、「ひとりビジネス」を始めて、もう5年となった。
あの大震災の前に起業したのであるから、解かりやすい。
その起業のきっかけもいい加減なものであり、そこで世話になっていた会社が立ち行かなくなって、自分の会社の名刺で仕事をせざるを得なくなっただけのことである。
会社自体は、上場企業をやめたときに「何か役に立つことも」と思って、設立しておいたものだった。
つまり、綿密な計画や目論見があって、起業したのではない。身過ぎ世過ぎために、気が付いたら、ひとりビジネスになってしまっただけである。
よく生きていられるもんだと、自分でも感心するばかりだ。

そんな私だが、やってみると「ひとりビジネス」が、案外自分に合っているような気がした。
そんなときに、本書を見つけて「ここはひとつ、真面目に考えてみよう」と思って読んだのである。

本書は、様々な「ひとりビジネス」をやっている人たちにインタビューした記事を集めたもの。
色々なケースがある。
「まったく食えない」と定評のある資格(笑)「マンション管理士」で、独立して頑張っている人。
墓参り代行を、「儲からなくてもいいから」とやり続けるおじいさん。
ペット葬儀の主婦。
女装ハウスを営むミステリアスな美女。

実に参考になる。
評価は☆。

本書に興味深いデータが乗っている。
かつて、60年代だと、いわゆる個人事業主の世帯が60%を超えていたそうである。職人や商店主、農家もみんな、個人事業主だった。
それが、今や給与生活者の世帯が80%を超えるのだという。
つまり、世間からは、どんどん個人事業者が淘汰されていき、みんな「会社員」になってきた、ということである。
世の中がどんどん「企業化」されてきた、といってもいいだろう。

気が付けば、職人さんはいなくなり、工務店が幅をきかせていて、商店は大手チェーンの傘下でコンビニになった。みんな法人化したわけだ。
農家も、そろそろ「株式会社化」が進められようとしている。
これは、どうにも避けようのない流れだと思う。

かくいう私も、ひとりビジネスとはいいながら、やっぱり法人である。つまり、給与生活者になっているわけである。

ただ、それでも「ひとり会社」と、大きな「カイシャ」との間には、明確な違いがある。
「ひとり会社」は、すべて自分が決められるかわりに、すべてを自分が背負わなければならない。自由と限界が常についてまわる。
「大きな仕事」はできないが、「こだわりの仕事」は可能だ。
そのあたりが、ひとり会社の成否を決めるように思う。

私自身の経験から言えば、独立しなさい、なんて、とても言えない。
「フリーは厳しいよ」としか、言えないと思う。
幸い、私には、過去の業界で培った経験とノウハウ、専門知識と営業スキルが少々あった。もちろん、人脈もあった。だから、なんとか生き延びている。
しかし、同じことを、他人様に推奨する気にはなれない。
できれば、やりがいがあって、正当に評価されるカイシャに入ったほうがいいですよ、と言う。
若い人には、どうせ大した経験もない薄っぺらな「自分探し」なんかアキラメて、どこかの会社に潜り込んで必死に3年やりなさい、と言う。
必死に仕事をした経験もないのに、私に向いた仕事がわかると思う傲慢さに、まず気がつくべきだ、と。
就職のプロがいう「自分らしさ」に騙されちゃだめだ、あれは彼らのポジショントークなんだ、実際には「やっているうちに、どこに嵌るかは、世間がなんとなく決めてくれるし、それに従うのがいい」それが仕事だと思う。
もちろん、天才は別である。
だいたいの人は、天才でなく、凡才なのだから、ハナから大した「自分」なんかないのだよ。

本書を読んで思ったこと。
そうか、みんな頑張っているんだなあ。俺も頑張らないとダメだなあ。よし。

これだけを思ったのだから、大した本だと思うわけである。
儲け方?そんなものがわかったら、本なんか書いている場合じゃないだろ(笑)そんな本は、ありません。