Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

サマードレスの女たち

「サマードレスの女たち」アーウィン・ショー。小笠原豊樹訳。

今から30年前「夏服を着た女たち」を、常盤新平の訳で読んだ。
まだ大学時代だったと思う。
正直、ピンと来なかった。長くつきあった女を持たなかったので、この小説の感じがわからなかったのだろう。

古本屋で見かけて、懐かしくなり、思わず手に取った。
訳者が変わっていることも大きいと思うし、こちらも年を重ねて(ジジイになった)いる。
なるほど、味わい深いと感じた次第。

短編小説で、話は簡単である。
ときは第二次大戦前のニューヨーク5番街。
まだ若い夫婦が二人で散歩している。
季節は夏なので、夏服を着た女達が歩いている。
美人を見つけるたびに、旦那の視線はそちらを追ってしまう。
妻は不機嫌になる。どうしてあなたはそうなの、という。
夫は、実は俺はいつもこうなのさ、と告げる。
妻は気分を害して拗ねる。
その有様を見た夫は、そんな妻を改めて美しい、と思う。
まあ、そんなたわいもない話だ。

しかし、この情景からにじみ出る「豊かさ」はどうだろう。
米国の繁栄ぶりが、このニューヨーカー短編にあふれている。

こんな小説を書いている国なので、日本は「勝てる」と侮ったのだろうな。
で、結果は、ご存じの通りである。

海外はアジアばかりをウロウロしたので、米国には行ったことがない。
あまり、行きたいと思わないのである。
この小説の中にある5番街は、おそらく、今の米国には既に無いであろう。
時代は変わってしまった。

エドワード・ホッパーの名画「ナイトホークス」が描かれたのが1942年である。
つまり、戦争中ということになる。
その夜のニューヨークの一風景だ。

ベトナム戦争以後、米国は変調してしまったと思うが、その前の米国を感じることができる作品である。

こういう作品を見ると、当時の日米の差を痛感せずにはおれない。
よく物量の差を言うし、それはもちろんあるのだが、おそらく、物量だけではない。
残念であるが、日本が貧しかったのは、物量だけでなく、その思考性、感性においてもそうだったと思われてならないのである。
それとも、物質が豊かになれば、心性もおのずと豊かになるだろうか?

そう思うと、今後の支那の先行きにも、一層の興味が湧くのですなあ。