Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

書評「水戦争」を再掲します(一部)

入管法の改正の裏であまり話題になっていないが、水道民営化法案が進んでいる。
これは、今までの国鉄電電公社とはワケが違う問題である。
2008年に「水戦争」という本を読み、書評をした。
その書評の後段に、私の考えを記しておいた。
私の水に関する考えは、この10年間を経て、この当時と変わっていない。

おそらく、水道民営化の行き着く先は、単に「飲料水」だけでなく、すべて「日本の水」そのものの危機につながるだろうと思う。

-------------------(以下 自記事より再掲)

著者は、巻末で、我が国の水利用についても触れている。
実は、日本は、降水量でみると、それほど恵まれた状況ではない。おまけに国土が狭くて、川が急峻であるから、すぐに水が海に流れ込んでしまう。
河川の氾濫も多い。それで、あちこちにダムをつくり、堤防をつくる。
ところが、江戸時代の治水をみると、堤防は「乗り上げ堤防」(洪水のときには水位が堤防を越える)や「かすみ堤防」(わざと決壊用の隙間がある堤防)、防水林(洪水のときに、流れてきた流木や家屋が引っかかって堤防となる)などのような「水をなだめる」治水である。
もしも、コンクリート堤防のような「水を封じ込める」治水をすると、河川が氾濫したときに、そのまま下流域は大被害になる。だから、数百年に1回の決壊に備える堤防が必要となり、巨額の建設予算を必要とするのである。これは、そもそも思想に問題があるのではないか?
日本を欧州諸国と対GDP費で公費使途をみると、建設関連が3倍で、そのかわりに福祉が1/3しかない。道路や箱、港湾や堤防、ダムばかりつくって、福祉をしない国なのである。そもそも、カネを使う国作りをしてしまっているのだ。
山への植林なども考え併せて、国民みんなが豊かに暮らせる国土作りを考えなくてはいけない。それは、高速道路を作ることでは決してないのである。
みんなが春先になると花粉症になる。杉ばかりが植えられて、落葉も結実もなく、動物も住めない、荒れ果てた山林はやがて地滑りを起こす。
だから砂防ダムが必要になる。しかし、落葉土が消失すると、今度は海の栄養がなくなり、魚もいなくなる。魚がいなくなるから、石油を使って養殖をしなければならない。
そうやって、見かけの経済統計だけがつり上がる。お金がなくては生きていけない国土になり、農家は農を捨てて、ダムや道路工事で働くのだ。
そんな国になっているのが、日本である。
そもそも雨が少なくても、どうして日本人は水をタダだと思うほど使えるのだろうか?
それは、太陽と水の割合がちょうど良くて、放っておいても草ぼうぼうになるくらい恵まれているからだ。他の国では、砂漠になってしまうというのに。
なのに、我々は、「緑のダム」である山林を放棄し、子孫の代には使えなくなるダムばかりをつくる。

この国はどうなっているんだろう。