Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

震える牛

震える牛」相場英雄。

カバーには「平成の砂の器」という惹句がある。
思えば、ついこの間に令和になったと思ったが、もう3年である。
まして、昭和の遠くなったことよのう、、、などと昭和生まれとしては思うのである。

で。本作であるが、主人公は新井薬師前に住む古臭い刑事、田川である。地取り鑑どりという、地道な聞き込み捜査の名人と言われている。
アルコールを飲みすぎて身体を壊し、継続捜査班という部署で働いている。
継続捜査班というのは、平たく言えば、捜査に行き詰まった事件を洗い直すという、ちょっと最前線からは下がった部署である。
そこで田川は、中野で2年前に起きた居酒屋での2名の殺人事件の再捜査を行うことになる。
居酒屋に押し入った強盗は、レジのカネを奪い、店の奥に居合わせた客2名を刺殺して闘争した。
当初は不良外国人による殺人強盗事件として捜査されていたが、行き詰まっていた。
田川は、中野の聞き込みで、犯人が外で待っていた女の運転するベンツで逃走したという情報を得る。
カネに困った外国人がベンツで闘争するのは妙ではないか?
この聞き込みをもとに車種を特定し、それが六本木の高級クラブで働く若いチーママの車で、事件後にすぐ廃車にされた事実を掴む。
店の聞き込みをもとに、女の客をあたっていくと、全国に展開する大型ショッピングセンターの2世が浮かび上がった。
この大型SCは地方に出店しては地場の商店街を潰し、収益が悪くなると撤退した跡には何も残らないというので「焼き畑農業」と呼ばれている。もともとは、精肉店として出発しており、スーパー事業では肉に定評があるチェーンでもある。
田川は、さらに被害者2名を追っていき、一人はいわくつきの産廃業者、もうひとりは獣医で、ふたりとも東北で大型SCにつながっていることを突き止める。
二人は、偶然に居合わせた客ではなく、何者かに呼び出されて殺されたのである。
そして、その大型SCは、地元の政商と呼ばれる業者に脅迫されて、肉製品加工の機械を大量に買わされているらしい。
田川は、ついにその背景にあった東北の肥育農家までたどり着き、事件を明らかにする。


なるほど、たしかに「平成の砂の器」かもしれない。
砂の器」は社会派といわれミステリ分野を切り開いた記念碑的な作品だが、本作も同様で、謎解きよりも社会性に重きを置いた作品である。
ワンコインで買える弁当に、コロッケやハンバーグまで入っているのはどういうことなのか?
普通に考えれば、それは不可能なことである。
不可能を可能にしているのは、どこかに仕掛けがあるからである。
それがわかっている人は、本作で登場したスーパーの店員のように、売っている自社製品を口にしなくなる、ということになる。
インパクトは十分。評価は☆。

日本人は、食の安全にはたいへん敏感な民族で、日本政府もそれをわかっており、食品に関する規制はかなり厳しいほうと言われている。
しかし、日本の食品価格は先進国の中でも低い。
アメリカ人は日本のランチが千円以下であることに驚くそうであるし、牛丼や立ち食い蕎麦に至っては東南アジアと変わらない。
もちろん、外食産業に従事する人の給料が安いのが大きな原因であるが、それだけでべらぼうな安さを実現できるわけではないのだ。
だから立ち食い蕎麦に「逆二八」そば粉2割の小麦粉8割などという代物が使われることになる。もはやウドンである。
粉ものでそれなのだが、じゃあ肉料理はどうなのだ?ということになる。
つなぎのパン粉がたっぷり入ったハンバーグは、まだかわいい。
100%ビーフで200円しないものは、どんな100%ビーフなのかということになる。
あんまり詳しく知ると、食えなくなってしまうのだ。
実際、私はアレは食いません。あのピンク色のアレを見てしまうと、ねえ。。。
かくして、連日「男子厨房に居る」わけで、スーパーで買ってきた野菜やら肉を自炊することになる。
これが、結構たのしいのである。
アジを三枚におろすと、刺し身がやせ細ってしまうのが、にわか仕込みの限界なのだが、そうすると隣で愛猫が嬉しそうにするのだ。
ま、いいかあ、と思うのですなあ。