Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

八本目の槍

「八本目の槍」今村翔吾。

 

今年最後に読んだ本が大当たり。普段の行いが良いのでしょうか(苦笑)

まあ、直木賞受賞作なので、当然ですが、ほんとに素晴らしい。

 

舞台は豊臣時代。

秀吉の「賤ヶ岳の戦い」で活躍した「七本槍」とと呼ばれる小姓たちのその後を描いた連作短編集。

七本槍それぞれを主人公にした短編を連作して七作、これらを通して「八本目の槍」こと石田三成を描くという趣向はすごく考えられております。

かの関が原の戦いで石田三成は敗れるのですが、それさえも石田の計算のうちにあった、という話です。

 

七本槍の面々は、小姓時代は大部屋にともに住み、互いに将来の夢を語り合う。

しかし、だんだん年齢を重ね、出世してくるとそれぞれに鬱屈を抱えるようになる。

加藤清正は己の才能を向けるべき対象に迷い、脇坂は女に迷い、片桐は自分の才能のなさに、加藤嘉明は出自の秘密に。

気がつけば、もう昔のように語り合えなくなっていることに気がつく。

ところが、石田だけは違うのです。そんな状況をすべてわかった上で、あの当時とまったく変わらない心持ちでいる。

石田三成七本槍に数えられなかった男ですが、もっとも対立した福島正則が「八本目の槍」と呼ぶ、つまり「俺達の仲間だ」と認めて物語は終わる。

すべてきちんと考え抜かれた、素晴らしい構成。

 

評価はもちろん☆☆☆。

これは、何度も読み返したくなる逸品です。

 

大学時代、あるいは新入社員時代に星雲の志をもって話し合った友だちと、今でも同じ心持ちで話し合えたら、それは素晴らしいことです。

しかし、有名な2chのスレにもあるとおり。

学生時代と同じ安居酒屋で、同じ話を繰り返す。それはそれで楽しいけれども、いつもそれでは、、、と思うようになる。

俺たちも、もう、たまには銀座で、いや赤坂でもいい、気の利いた割烹で、あるいは重厚なカウンターのバーに行ってもいい年頃だろう?だけど、お前は、、、となる。

時は過ぎ去った、しかし、いつまでも「あのときのまま」で居られる人は、それだけ当時から飛び抜けた才がある、特別な人だけなのですねえ。

 

ほんとうに、今年も終わり。来年はとうとう還暦か。

そんな年齢にふさわしい佇まいの男になりたいが、、、まだまだのようです(苦笑)