「八本目の槍」今村翔吾。
今年最後に読んだ本が大当たり。普段の行いが良いのでしょうか(苦笑)
まあ、直木賞受賞作なので、当然ですが、ほんとに素晴らしい。
舞台は豊臣時代。
秀吉の「賤ヶ岳の戦い」で活躍した「七本槍」とと呼ばれる小姓たちのその後を描いた連作短編集。
七本槍それぞれを主人公にした短編を連作して七作、これらを通して「八本目の槍」こと石田三成を描くという趣向はすごく考えられております。
かの関が原の戦いで石田三成は敗れるのですが、それさえも石田の計算のうちにあった、という話です。
七本槍の面々は、小姓時代は大部屋にともに住み、互いに将来の夢を語り合う。
しかし、だんだん年齢を重ね、出世してくるとそれぞれに鬱屈を抱えるようになる。
加藤清正は己の才能を向けるべき対象に迷い、脇坂は女に迷い、片桐は自分の才能のなさに、加藤嘉明は出自の秘密に。
気がつけば、もう昔のように語り合えなくなっていることに気がつく。
ところが、石田だけは違うのです。そんな状況をすべてわかった上で、あの当時とまったく変わらない心持ちでいる。
石田三成は七本槍に数えられなかった男ですが、もっとも対立した福島正則が「八本目の槍」と呼ぶ、つまり「俺達の仲間だ」と認めて物語は終わる。
すべてきちんと考え抜かれた、素晴らしい構成。
評価はもちろん☆☆☆。
これは、何度も読み返したくなる逸品です。
大学時代、あるいは新入社員時代に星雲の志をもって話し合った友だちと、今でも同じ心持ちで話し合えたら、それは素晴らしいことです。
しかし、有名な2chのスレにもあるとおり。
学生時代と同じ安居酒屋で、同じ話を繰り返す。それはそれで楽しいけれども、いつもそれでは、、、と思うようになる。
俺たちも、もう、たまには銀座で、いや赤坂でもいい、気の利いた割烹で、あるいは重厚なカウンターのバーに行ってもいい年頃だろう?だけど、お前は、、、となる。
時は過ぎ去った、しかし、いつまでも「あのときのまま」で居られる人は、それだけ当時から飛び抜けた才がある、特別な人だけなのですねえ。
ほんとうに、今年も終わり。来年はとうとう還暦か。
そんな年齢にふさわしい佇まいの男になりたいが、、、まだまだのようです(苦笑)