Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

美しいこと

「美しいこと」木原音瀬

ついに、single40の書評に初のBL小説が登場である(笑)。
実はそうとは知らないで買った。裏表紙の紹介文に「女装をする趣味の男が云々、、、」と書いてあったので、ちょっと興味を惹かれたのである。

主人公の松岡は敏腕営業マンであるが、少し前に同棲した女性と別れている。彼女は「適当に処分しておいて」と言って出てしまったので、結構な量の服や化粧品を残していた。
ある日、松岡はいたずら心が起きて、その服を着てみた。男性にしてはスリムな松岡は、彼女の服が着られるのではないかと思ったのである。
意外にすんなり着られた上で、入念に化粧をしてみると、相当な美女が出来上がっていた。
松岡は、週末のストレス解消に女装して街を出歩き、誰にも女装を見破られないのを楽しむようになった。
ある日、松岡は女装中にナンパに軽い気持ちで応じたところ、酒を飲まされてひどい目に遭い、困っていたところを同じ会社の総務部の廣末に助けられる。
もちろん、廣末は相手が松岡だと気がついていない。純粋な親切心で助けたのである。
廣末は仕事でも要領が悪く、左遷されるぐらいの男であったが、親切で純粋な男であった。
松岡は翌週に廣末にお礼をし、それをきっかけに二人は食事をともにするようになる。
声を出すと男だとバレるので、松岡は話すことが出来ない障害があることにして、筆談をする。
二人の交際は深まり、廣末は本当に松岡のことが好きになってしまい、愛の告白をする。一度は断った松岡だが、廣末の純情にほだされてしまい「私がどんな人間でも愛してくれる?」と尋ねる。
廣末は無論だといい、ついに松岡は正体を告げる。
廣末はショックを受けてしまうが、松岡は愛は嘘だったのかと詰め寄って、廣末のアパートに押しかける。最初は廣末のほうが松岡に惚れていたわけだが、ここで立場が逆転している。
そこで、二人はなかば強引に、一度だけ肉体関係を持ってしまう。
しかし、そこから廣末は松岡と距離を取るようになる。二人はそのまま自然消滅かと思われた。
そんなところに、松岡の営業部のOLの葉山が、松岡に友人の女性を紹介したいと持ちかける。
松岡は、気分を変えようという気持ちもあったので、その話に応じる。
最初は女性が恥ずかしいだろうから、ダブルデートにしようと葉山は言い、松岡も賛成する。
そしてダブルデートの当日。葉山は松岡に紹介する女性と、自分の恋人だという男を連れてくる。その男はなんと廣末だった。
二人はぎくしゃくした雰囲気を女性陣に気づかれないように振る舞いながら、ダブルデートが始まる。。。


この著者はBL小説界ではたいへんなビッグネームだそうだ。
巻末の解説によると、BLのほうが百合(女性同士の恋愛ですね)よりも、昔からの伝統があるぶん、裾野も広いのだそうである。
そういえば、稲垣足穂とかいたなあ。ちなみに、私自身は百合はかなり好きです(笑)
評価は☆。
前半の女装がバレるまでの話は面白かった。が、バレてからのお話は、私にはちょっと難しいな。
もちろん、私の性的嗜好に同性が含まれないということが大きいのだろうけど、かなり違和感があった。

違和感の理由を説明する。
私が思うに、「好き」には2種類あると思うのである。
具体的には、行為を「したい好き」と「しない好き」である。
この主人公の松岡は、廣末を好きになる。好きになるのだが、それが完全に「したい好き」で、まったく迷わない。「愛=したい」なのである。
この手の小説や漫画(百合も含む)でたびたび用いられる手法に「好きな相手がたまたま同性だっただけ」というのがある。
それは理解できる。
しかし、その「好き」が、「したい好き」なのか「しない好き」なのかのほうが、問題の本質なんじゃないかな。
私は、同性を好きになることはある。あるけど、「したい」とは思わない。
じゃあ、女性相手の「好き」なら、基本的に「したい好き」か。
そう思うケースが多いのだろうな。男は性欲が先にくるから、そう思う場合がほとんどだろう。
しかし、あとで「あれ?」と気がつくことがある。
たとえば、すごく仲の良い女友達と。ある日、一線を越えてしまう。すると、もう友達ではいられなくなる。残念だけど。
「しまった」と思う。あとで気がつくのである。「こんなことをしたいんじゃ、なかった」
でも、もうもとには戻れない。だから「したい好き」にしてしまおうとする。だけど、一度気が付いた気持ちは、なかなか、思うように変わらない。
お互いに好きなのに、うまくいかなくなる。嫌いじゃない、大好きなんだ、だけど、、、という違和感。
つまり。
女性相手だって「しない好き」はある。私の経験だけど。

一方が「したい好き」もう一方が「しない好き」だった場合に、話はさらに面倒になるけど、事態は行き着くところに行くしかない。間違えちゃった責任を取らないといけない。

ちなみに、今話題の同性婚問題ですが、私は基本的に賛成する立場です。