Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

RED

「RED」島本理生

さきに「ファーストラヴ」を読んで、意外に(?!)面白く読んだので、同じ作者の作品を読もうと思い、適当に選んだのがこれ。
平たくいえば、古書店にたまたま転がっていたのであります。

主人公は30代の主婦、塔子。夫の実家に同居し、4歳の娘が一人いる。
出産を期に前の職場を退職して、専業主婦になった。
義実家での生活は、表向きは恵まれていると言われるが、実際には気を使うことが多く、ストレスを抱えている。性生活も惨めなものだった。
夫は真面目だが、育児に対する協力などはなく、塔子に投げっぱなしである。
そんなある日、塔子のもとの職場の同僚たちが飲み会をやることになり、久しぶりに塔子も合流。そこに、当時の上司だった鞍田も出席していた。鞍田は以前に、塔子と不倫の関係にあった男である。
鞍田は、今は離婚し、当時とは違う会社にコンサルの形で入っている。
後日、鞍田から塔子に連絡があり、その会社に欠員が出るが、そちらで働かないかと言う。契約社員の形である。
塔子は鞍田と会って話すことにするが、そこで以前の関係が再燃してしまう。
夫は、働きに出る塔子にあまり良い顔をしなかったが、今後のことを考えると稼げる時期に稼いでおくべきという塔子に説得される。
30過ぎて新しい職場に復帰した塔子は、再び新人として働かなければならない現実に直面するが、懸命に努力して評価を勝ち取る。
そして、契約社員から正社員への契約変更を勝ち取る。その反面、残業なども増えていくが、義母と塔子にあいかわらず育児を丸投げの夫とはさらに心の距離が空いてしまう。
一方、鞍田との関係は続き、苦悩する塔子は、いったんは鞍田との関係を断ち切ろうとする。
しかし、大雪のなかの富山出張中に駆けつけた鞍田との関係は復活。
鞍田がガンで病状が厳しくなりつつあることを知った塔子は、ある日、娘の翠を連れて家を出て、鞍田の別宅がある鎌倉に行く。
そこで、鞍田と会うのだが。。。


前回の「ファーストラブ」も働く女性が主人公だったが、この塔子とは年代が違うし、テレビ出演する臨床心理士という立場も一般的なものとは言いがたかった。
すでに結婚して子供もいる塔子の人生のほうがリアル感がある。
その塔子が、ドロドロの不倫沼にハマって、、、という話である。
評価は☆。
童貞坊やの夫が、世間一般的に言う「良い人」なのだけど、絶望的に何も分かっていないのが味を引き出している。ていうか、なんでこんなやつと結婚したんだ?レベルである(苦笑)
まあ、本書にもあるように、適齢期の女性というのは友人が結婚するたびに「置いていかれる」恐怖を味わうものなのかもしれない。
それで、こんなカスをつかむのだなあ。

舞台装置的には昼メロなので当然そうなるのだが、とにかく不倫の場面の行為の描写がすごい。フランス書院も読まなくなって久しい私にとっては、相当にハラハラものだった(苦笑)。
ふと思ったのだが、男性作家と女性作家の官能描写では、女性の方がエロいとうか、妙なリアルさがあるなあ。女性の猥談のほうがエグいという話もあるけど、私は当然にそんな話に入れてもらったことがないから、いまいち分からないが。

現代の女性の置かれた立場と心理を描き出した主流小説としても十分に面白いが、官能小説としてもすごい。
私は、いつかは官能小説を書きたいと思っていたのが、これを読んで、ちょいと歯が立たないと感じた(苦笑)
経験値が不足しているのが原因と思いますが、いまさら経験を増やす気もないので、どうも路線を変更したほうが良さそうですね(笑)