Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

紅いオレンジ

「紅いオレンジ」ハリエット・タイス。

 

物語の冒頭、わずか2ページの不思議な独白から始まる。慎重に首縄をセットし、締め切らないように長さを調整し、テーブルの上には紅いオレンジを切って置いてある。

そこから場面が始まり、主人公のロンドン在住の女性弁護士アリソンの活躍がはじまる。彼女は心理療法士カールと結婚し、娘が一人いる。仕事のキャリアを積み重ねて、ようやく初の殺人事件の弁護をすることになった。夫を刺殺した容疑のマデリーンの弁護である。

彼女は同じ事務所の先輩弁護士のパトリックと不倫の関係にある。アリソンは弁護士のハードスケジュールの中で、なかなか家庭のことはできず、夫のカールに頼っている。カールはかつて失業したことがあり、そのとき専業主夫になっていたのだが、最近ではようやく心理療法士として顧客を持って仕事をしている。しかし、依然として独立できる規模ではなく、家計の稼ぎは圧倒的にアリソンが稼いでいる。

そのアリソンはストレスのせいもあって酒乱の気があるようで、業務の上がりに酒を飲み始めると自制が効かなくなりグラスを壊しパトリックを情事をして朝帰りするのがしばしばである。夫のカールは察しているのかどうか、態度は当然に冷たい。

さて、マデリーンの弁護の件をパトリックと二人で進めるアリソンだが、マデリーンは罪状認否で有罪答弁をしたいと言う。殺人の有罪を認めれば、ほぼ無期懲役である。アリソンは故殺つまり殺すつもりはなかったが、心理的に自制がしがたい状況であったと主張したいと考えてアリソンから話を聞き出す。彼女は夫から絶え間ない暴力を受けていたのだ。それなら故殺の主張が可能だとアリソンは考える。

一方で、アリソンの家庭の状況はさらに悪化し、ついに夫のカールは離婚を切り出し、二人は別居生活をはじめる。

そんなとき、なんとパトリックにレイプの容疑がかかり、逮捕されてしまった。常日頃から女癖が悪いパトリックならやりかねないとアリソンは考える。自分も行為を強制されたときがあったからである。やがてパトリックは起訴され、前途を悲観して列車に飛び込み自殺してしまう。

このニュースを受けてマデリーンは「すべてを知っているパトリックではないのでもうだめ」と言い、再び有罪答弁をすると言い出す。アリソンは、マデリーンがパトリックだけに事件の真相を打ち明けていた事を知る。マデリーンは自分を犠牲にするつもりだったのだ。

そのマデリーンに勇気をもらったアリソンは、家庭を守るためカールと話し合いをしたいと考えて、出ていった自宅に戻る。

そこでカールが隠していた真相に突き当たることになるのだった。。。

 

途中まで、ミステリというよりはドロドロの不倫劇が描かれて、まるで昼メロを見ているよう。まあ、言うほど私は昼メロを見たわけではないですが(苦笑)

しかし、パトリックが自殺してからは、隠されていた真相が続々と明らかになり、息をもつかせぬジェットコースターな展開になる。冒頭の2ページの意味がわかるときには唖然、、、という趣向で、見事である。

評価は☆☆。

昼メロ展開がちょいと自分にはきつすぎたので(苦笑)

 

本作に出てくる人は、皆それぞれ、ちとおかしな性癖を持っている。

アル中だったり、カサノバばりのプレイボーイだったり、レイプまがいの強引な行為が好きだったり、不倫に溺れたり、首絞めプレイが好きだったり、、、、まあ、なんというか。人間らしいと言えば良いのか。

で、そういう行為に向かうときの人間のすさまじいエネルギーが、色々な事件の引き金になっているわけである。そのへんに共感する人が多いから、この手の小説がウケるわけであろう。

この性癖なるもの、多かれ少なかれ、みな ある程度は持っているものであるようだ。

私にも性癖があるが、世の人々と同じく、そういうことは秘密にしているわけである。皆が、そんな性癖を抱えて生きているのだ、、、そう思うと、何やら微笑ましくなってくるのである。自分の性癖を笑えるようになるには、相応の時間がかかると実感するのですねえ。