Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

銭の戦争

「銭の戦争」パク・イングォン。

 

主人公のナラはソウル大学数学科を首席で卒業し、財閥グループの内定を得た優秀な若者である。ところが、父親が闇金融から多額の借金をして自殺してしまう。ナラは父に頼まれて連帯保証人になっていたため、たちまち追い込みがかかる。

ブラックリストに掲載されたために財閥の内定は取り消し。母親は前途を悲観じて自殺未遂を起こし植物状態になった挙句に死亡。ナラの兄はナラを助けようと投身自殺するが、自殺であることを理由に保険会社は支払いを拒否。

ナラは中小企業に職を得るが、そこにも取り立てが来て解雇され義姉の家に厄介になる。そうすると、闇金は義姉の家族に危害が及ぶと脅して、どんな方法でも金をつくれと返済を迫る。追い詰められたナラは闇金の社員を殺してしまい、懲役8年の刑を受ける。

その刑務所の中で、ナラは無期懲役となっている伝説の闇金王と知り合う。彼から闇金のノウハウをすべて学んだナラは、出所後に闇金に勤務し非常な実績を表すのだった。。。

 

うーん、、、なんというか、話がすごく荒っぽいのだなあ。お兄さんの自殺の件にしても、自殺なら保険金は下りないと知っているはずで、もう少し方法を考えるはずだろうし。ナラが刑務所に入ったあとに、伝説の闇金王に会うために房を変わったり刑務所自体を移送されたりするのもねえ。だいたい、1囚人が刑務所の所長と話できるわけもないし。なんというか、少年マンガだなあ、これ、、、と思っていたら、これは本当にマンガの小説化なのだそうだ。で、そのマンガがドラマ化されて、韓国で最高視聴率37%をとった大人気作だという。なるほど、そんなエンタメか。

 

評価は無星。小説になってないと思うので。あくまでマンガだと思うけど、このガバガバなストーリー展開はよく言えばジェットコースターだが、あまりにスキだらけで、日本の読者ならもう少しリアリティがないとついてこないような気がする。少年ジャンプなら大丈夫かなあ。

 

最近、シナの小説が進境いちじるしいと思う。

「兄弟」(余華、泉京鹿)は私が今まで読んだ小説の中でもベストスリーに入る面白さだし、SF小説「三体」(劉治欣)もとんでもない傑作だった。文革でシナの人文文化は滅んだと思っていたのだが、そこから新しい芽が出てきたのだ。

では、半島はいかに?と思って手を出してみたのだが、こっちは資本主義の悪いところと韓国の恨を凝縮したような出来栄えで、とにかくウケればどんなに浅くてもオッケーで復讐譚で気持ちよく、、、まあ、そんな印象を受けた。

今や、日本の漫画やアニメは世界に誇る文化になっているが、その背景にあるのはクリエイターの細部をおろそかにしない情熱である。リアルな描写にこだわり、その上で「面白い話」をつくる。日本の文化は、そんな能力に長けているクリエイターを生み出しており、それが他を寄せ付けない独自の文化にまで昇華した。韓国もドラマやアニメでかなりのシェアを出してきているが、肝心の話の面白さが浅い。これは脅威ではない。

しかし、シナはちょっと違う。クリエイターの世界では「最後は面白い話をもっているやつが一番強い」という。その「面白い話」をつくる能力において、日本とはまた違った高い質の面白さを出してきているように思う。

これから、シナは経済的に長期の停滞に陥ると思うのだが、そういうとき、文化はかえって深みを増すのである。韓国のウォッチはしなくてもいいと改めて感じたが、シナについては、個人的に注目していきたいと思っている。