Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました

「科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました」朱野帰子。

 

私は基本的にラノベというものを読まないのだが、最近の若者はラノベしか読まない、らしい(苦笑)。ラノベは読まない、というのは、つまりはジジイの証左かもしれぬ。これはいかん。時代についていけてないのだ、、、みたいなことを思ったりしたので、いかにもラノベっぽいタイトルに惹かれ購入(苦笑)ラノベ文庫ではなく、普通の文庫に出ている本を買うあたりが、我ながらいじらしい(笑)

 

主人公の賢児は、科学オタの30歳のサラリーマンである。転職して柴田電機に入社し、商品調査で実績をあげて商品企画部に異動してきた。

賢児は、小学生の頃から科学者にあこがれてきた。友達に譲という優秀な子がいて、ふたりは親友だった。しかし、賢児は譲と比べて、自分の才能が劣ると認めざるを得なくなる。父親は、科学者になるには膨大な資金が必要であることを指摘し、お前にその価値があるだろうか、と問う。賢児は、自分の限界を認めて、むしろ自分は商人向きだと感じる。そのまま文系の大学に進んで、調査会社に就職した。大学時代に、父はがんを患って亡くなったが、そのとき、心配する母はあやしげな健康食品や治療師たちに巨額のカネを使ってしまった。そのため一家は困窮する。その経験があって、賢児は似非科学を徹底的に憎んでいる。柴田電機から、似非科学商品をすべて排除すべきだと持論を述べるのである。

ところが、賢児が異動してきた商品企画部のメイン商材は、マイナスイオンが出るドライヤーなのである。空気がマイナスイオンを帯びるわけがなく、それを髪に当てたらつやが出るわけがない。しかし、賢児の企画した「まともな商品」は、消費者テストでは原価すら回収できない価値しか認めてもらえないのだった。

そんなとき、賢児はたまたま出席した科学シンポジウムで、譲と再会する。譲は、科学者をめぐる現実の環境の厳しさを語り、実際には「役に立つ=金になる」研究だと主張して研究費を確保するのに明け暮れている科学者の実態を語るのだった。

行き詰った賢児だが、そんなとき、姉が子供を出産することになって。。。

 

「お仕事小説」とあるが、まさにそう。学生時代の理想と現実、そのギャップに悩むというのは、誰でも経験することだろう。ちょっと気になったのは、賢児の設定が30歳だということ。そんなことは、もっと早い時期にぶち当たって、悩む話だとは思う。

評価は☆☆。

 

なんだかんだといって、世の中はカネを稼がないと話にならないのである。稼げない=価値がない。これは、どうにもならない真実。

一方で、じゃあ稼げばそれでいいのか、という話もある。そんなときのために、数学では「必要条件」と「十分条件」の違いを教えることになってるのだが、まあ、そんな悩みのときに学生時代の数学の話を思い出すやつも少ないのだろうか(苦笑)。

 

この手のテーマの話は、実はなかなか、ベストの解が見つからない話だと思う。理想をいっても、目先のカネがなければ、そっちに血眼になるのに仕方がないし。

一方で、ほとんど詐欺同然の商品を売って、巨万の富を築いて、だからどうした?と思う気持ちもあるしねえ。

ただ、長年働いていると、そういう初期の葛藤はなんとなく忘れてしまうのも事実。

久々に、そんな気持ちを思い出した。

各人がそれぞれに、実際の仕事で答えを出し続けていく話、なのでしょうねえ。