Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

がっかり力

「がっかり力」本田透

著者の「電波男」は「喪男」の側にたった共産党宣言のごとき衝撃の書であった。
恋愛資本主義」なんざ、しょせん「お金とちんちんの競争じゃないか」と断じ、そんなものに価値はない、俺たちは二次元で生きるんだ!と喝破したのである(苦笑)
開き直りも、ここまでくると哲学である。
私は、すっかり打ちのめされたものであった。

その本田氏の新書が「がっかり力」。
この「がっかり」の対立概念が「カリカリ」である。
世の中、リーマン以後、大不況で、この先もすっかり景気が回復するなんてストーリーはありそうもない。ひたすら低成長のつまらない世の中を、ジジババ相手の年金に所得を吸い取られつつ、ついでに無駄な公共事業で官僚に退職金吸い取られつつ、生きてゆかねばならんのである。
そんな有様で「いったい、政府は何をしているんだ」となれば、どうしたってカリカリせざるを得ない。しかし、そりゃ無駄なのである。どうしようもないのである。
で、いっそ、そんなダメな事態をすっかり織り込み済みにしちゃって「がっかり」しながら生きていこう、というのが本書の趣旨である。
カリカリの行き着く先はテロルしかないわけで、そんなイスラム原理主義は願い下げだとすれば、我々はいやおうなくがっかり生きて行かざるを得ない。
それなら、いっそがっかりを客観視して、楽しんでしまえ、ということのようだ。

著者が、ひとつの例としてあげているのが弱い時代の阪神タイガースファンである。
試合は予想通り(笑)旗色が悪い。すると「バカヤロー、川藤だせ~」となる。で「代打、川藤」。
すると「ほんまに出してどないすんねん」(笑)
こういう脱力系な「がっかり」を生きよう、ということらしい。

私は、野球で言えばベイスターズファンなのであるが、近年のベイスターズの凋落ぶりは激しく、連続最下位ばく進中である。今年は「やる大矢」というネタで盛り上がった。
「やる、やる」というのが口癖の、なあんにもしない監督である(笑)
これこそ「がっかり力」だ、というわけだ。

評価は☆。
がっかりした(笑)けど、まあ、たしかに、思うようにならない今の世の中を生き抜くためには、仕方がないことなんだろう。
カリカリしても、行き着く先はろくでもないところなわけで、がっかりしながら生きていく方が平和だ、という点には、納得せざるを得ない。

問題は、がっかりしっぱなしだと、人生が楽しくないことであろう。
そんなつまらないことだとは言えない。
貧しく、なんの娯楽もなく、未来の成長もないところで、おそらく生き甲斐を感じられるのがテロルだけだったら、人はそれに走るのである。
困ったことに、人間は人生を充実したいという欲望を持っている。ときには、それに命をかけてしまうのだ。

がっかりできるのは、がっかりしながら、それなりになんとかやっていけるからである。
がっかりは豊かさなので、がっかりできる時点で既に勝ちなのだ。