Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

邪悪

「邪悪」ステファニー・ピントフ。

舞台は100年前のNY郊外の小さな街である。当時は科学捜査もいまだ発展していない。DNAはおろか、指紋の利用すら行われてはいない時代である。
そこに殺人事件がおこる。女性が鈍器で滅多打ちにされて殺されたのである。
さっそくジール刑事が捜査にあたるのだが、そこに電報がやってくる。シンクレアなる大学教授である。
事件に関して重要な情報があるという。
シンクレア教授は、犯罪者の更生に関する研究を行っていて、フロムリーなる男の妄想を治療していた。
すっかり彼は治癒したという判断で、自由の身にしたのである。
そこにこの殺人事件が起こった。その手口は、あまりにもフロムリーの妄想とぴったり一致している。犯人はフロムリーであろう、というのである。
そこで、二人はコンビを組んで、消えたフロムリーの足取りを追い始める。
あちこちを追いまわす二人の前に、あらたな死体が現れる。
それは、なんとフロムリー本人だった。
さて、事件の真相は。。。


ミステリにしろ、ハードボイルドにしろ、ホラーにしろ、昨今はたいへん書きづらい時代である。
なにしろ、科学捜査全盛である。
傷害だの暴行だの、すぐに指紋や髪の毛1本のDNAからだって判別できるのである。
これらの証拠を何一つ残さなかった犯人、という設定からして、相当に無理がある。
かといって、適当に証拠を残せば、たちまち真相は露見である。これじゃあ、書きにくくて仕方がないだろう。ホームズ譚のよき昔が懐かしいわけだ。
そこで、一部の作家たちが妙案を思いついた。
時代を、100年前の過去にしてしまえばいいのである。
まだT型フォードの走るNYなら、これは良いじゃないか、、、というわけだ。

しかしながら、どうも、ことはそう上手くは運ばないようである。
著者は、100年前のNY近郊の雰囲気をつくるのに全精力を使い果たしてしまい、肝心の小説ははてさて、、、という出来だと思わざるをえない。
謎解きが大したものではないことは、ミステリの範疇ではないということでよいとして、殺人鬼の恐ろしさもからきしだめである。
100年前のNYというお膳立て自体がおどろおどろしすぎて、人物の造形が難しく、みんな似たり寄ったりの人間に見えてしまうのだ。
だから、小説としての面白さとか、味が感じられない。ただ、古い時代の古い話という感想になってしまう。
評価は無星である。
これは、全然だめですなあ。

読書の楽しみというのは、こういうときなのだ。
時間をかけて読んで、ああ、やっぱり駄目だった。そう思うと、思わずやる気が出てくるのである。
次は、きっとこれよりは、面白い作品に会えるに違いない。これ以下は、いくらなんでもないだろう。
これも、次への布石だ。うんうん、よしよし。
そう思ってしまうのである。
冷静に考えれば、阿呆である。
お見合いをして、とんでもないブ○がきて、次はこれよりは美人に間違いないといって喜んでいたら、正真正銘いかれている。
きっと、私はいかれているのである。

ま、そんなわけで。
明日から連休だ。
さて、どれを読むかな。
今から、わくわくしているのである。