2012-01-01から1年間の記事一覧
「SEの不思議な生態」きたみりゅうじ。IT業界というやつは、構造的には建設業と似ている。元請けがあり、設計事務所があって、現場監督がいて、現場があって、監理がいるわけである。SEというのは、だいたい設計事務所に所属することが多いけど、中小案件だ…
「信長の棺」加藤廣。本能寺の変のあと、信長の遺体が見つからなかったことは良く知られている。明智は必死に捜索したが、見つからなかった。さして広い敷地でもないのに、なぜだろうか?さらに、そもそも、本能寺の変の下手人は明智だが、裏で糸を引いたも…
「月ノ浦惣庄公事置書」岩井三四二。松本清張賞を受賞した歴史文学である。あとがきに「法廷ミステリ」との表現もあったが、本書は法廷ミステリではない。きわめて良質な歴史小説である。舞台は室町時代である。土倉(金融屋)の手代、源左衛門は借金のカタ…
本来ならば、もっと喜び、大騒ぎになってもよいはずである。何がといえば、内閣府の発表によって、12年1-3月期の実質国内総生産(GDP)が前期比+1.0%。さらに、名目成長率が+1.01%で(13四半期ぶり)数字上では「デフレに歯止めがかかった」からである…
「蒼龍」山本一力。著者のデビュー作品、オール読物新人賞受賞の「蒼龍」が収められた短編集。いずれも、素晴らしく水準の高い作品ぞろいで、はずれがない。なかでも、読後に印象に残るのは、表題作の「蒼龍」で、決してうまいとは思わないけど、著者の迫力…
「現代デフレの経済学」斉藤精一郎。初版は1998年だから、今からすでに10年以上前になる。で、日本政府は2009年にようやく「デフレ宣言」をした。なんのことはなく、つまりはバブル崩壊以後「失われた20年」となり、えんえんとデフレ不況に落ち込んでいるわ…
「ザビエルとその弟子」加賀乙彦。日本に初めてキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルの晩年を描いた小説である。ザビエルはマラッカにおり、当時、外国人の入国を禁じていた支那への布教を企図していた。もちろん、殉教覚悟である。ザビエルは、たいへ…
「デフォルト」相場英雄。六本木のバーの飲み仲間のエコノミストが、不良債権処理にかかる地銀の破たん処理について、日銀と政治家の不正な裏取引をリポートしたことがきっかけになり、左遷、退職させられる。そのエコノミストは自殺。仲間が、その仇をうつ…
「パリでメシを食う。」川内有緒。たいへん面白いドキュメンタリーである。本書の「メシを食う」は、別にグルメごっこをするわけではなくて、いわゆる「職業につく=メシを食う」ことを指している。つまり、パリに行って、現地で職業を得ている人たちの話で…
「憚りながら」後藤忠政。あの山口組系で「経済ヤクザ」「武闘派」として鳴らした後藤組の組長、後藤忠政氏の回想録である。もちろん、いろいろと、墓場にもっていかなくてはいけない話も多いわけである。後藤氏としては、今の時点で、話せることだけを話し…
「名をこそ惜しめ」津本陽。高名な時代劇作家は、果たして大東亜戦争屈指の激戦をどう描くのか?そんな興味で読んだのだが、さすがに迫真の描写はすさまじく、圧倒的な筆力を感じた。硫黄島は栗林中将による後退配備と肉弾戦で、米軍史上最大というべき大出…
長かった寒い冬もおわり、いつの間にやら桜も散っている。我が家の玄関先の小さな花桃がようやく咲いた。うちの花桃は遅くて、桜がなくなったころに咲くので、うまい具合に目立っている。春がきて、季節だけはすすんでいく。私は、相も変わらず、花の咲かな…
イントゥルーダー。高嶋哲夫。この人は、アメリカのシナリオライターのような小説を書く人だと思っている。良くも悪くも、きっちりと受けるパターンを知り尽くして小説を書いているのだな。そういう意味では、日本の作家=「表現者」というイメージよりは、…
「マラキア・タペストリ」ブライアン・オールディス。サンリオSF文庫、絶版。サンリオ再読シリーズも、ぼちぼちおしまい。最後はやっぱりオールディス。ディックは、いっぱい再版されたからねえ。舞台は並行次元のなかの中世都市、マラキア。なぜか、しょっ…
「修羅場のマネー哲学」木戸次郎。副題は「1億5000万円の借金を9年間で完済した男」90年のバブル崩壊で、日本の株式市場は音をたてて下落。そのとき、著者は証券マンだったが、他人名義で株式運用をしていた。総資産は実に6億円。毎日豪遊していたわけであ…
「杜松の時」ケイト・ウィルヘルム。サンリオSF文庫、絶版。大学時代に読んで、なにやら大きな衝撃を受けた「杜松の時」である。アメリカ女流SFの、たぶん最高峰、K・ウィルヘルムの、おそらくベストワン作品だろうと思う。近未来の世界。世界は干ばつで大不…
「HARLIE」デヴィッド・ジェロルド。サンリオSF文庫、絶版。大学時代に読んで、面白いと思った本。久しぶりに再読したら、やっぱり面白かった。主人公はオーバースン。心理学者で、仕事はなんとコンピュータの教育係なのである。というのも、彼が勤務する会…
「行かずにしねるか」石田ゆうすけ。実に7年5か月をかけて、世界一周を自転車でやった著者の手記である。こういう本は、たいがい面白すぎる(笑)まず、いくつかおさめられている写真がすごい。ぼろぼろの自転車は、まさに「道具」そのものだ。趣味の対象で…
大阪市で、公立高校で卒業式に国歌を歌っているかどうか、チェックしているというので、賛否両論が沸き起こっている。たいへん、おもしろい。(失礼)私は、まあ別に悪いこととは思っていないし、そもそも公務員は納税者に敬意を表すべきであると思うので、…
「着飾った捕食家たち」ピエール・クリスタン。サンリオSF文庫、絶版。ピエール・クリスタンはフランスのSF作家で、ふだんは大学で文学の教鞭をとっているらしい。とはいえ、本書の刊行日はすでに20年以上前なのだから、今はどうなっているのか分からない。…
「last call」と目の前の黒いドレスを着たおねえさんが、低く歌うように唱え、僕らはだまってテーブルの上のチップを見つめる。彼女の発音は「ラストコール」ではなくて「ラスコー」と聞こえる。ここはフィリピンのカジノである。私は、先週末から今週の休暇…
あれから一年がたちました。14時46分には、ちょうどサイクリングロードにいましたが、一時停止して黙祷。同じく、黙祷するサイクリストたちを見かけました。あっという間の一年でした。早く感じるのは、何も解決していない問題が多すぎるからかもしれま…
「去勢」アントニイ・バージェス。サンリオSF文庫、絶版。舞台は1970年代のイギリスであるが、現実の世界と異なって、宗教革命が起こらず、いまだに欧州大陸をカトリック教会が支配しているという設定になっている。アメリカはニュー・イングランドと呼ばれ…
「食う寝る座る 永平寺修行記」野々村馨。一読、傑作である。昨今流行りの物見遊山のライター風情になしえるところではない。ここにはホンモノがある。永平寺と言えば、曹洞宗を開いた道元禅師の開山になる、日本の禅の大本山である。そこの修行が厳しいとい…
「四人の連合艦隊司令長官」吉田敏雄。男子がやってみたい3つの職業、という俗説がある。1に、指揮者。2に、プロ野球の監督。3に、連合艦隊司令長官。いずれも「男子の本懐」を遂げられる職業というわけであろう。「総理大臣」が入ってないのは、、、ま…
「江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた」古川愛哲。副題は「サムライと庶民365日の真実」。たぶん、この本は副題のほうがもとのタイトルだったのではないかと思う。で、敏腕編集者が「このタイトルじゃ、売れないな~。よし」とくっつけたのが本書のタイト…
「死にたい老人」木谷恭介。ミステリ作家の木谷恭介が、自らの老いを実感して、断食による安楽死をこころみる。結果は、、、タイトルどおり。「死んだ老人」ではないのである(苦笑)。人間、思うようにいかないものでありますなあ。著者は、断食安楽死にあ…
福島原発事故に関する民間事故調査委員会の報告書が大きくマスコミに取り上げられています。菅前総理のリーダーシップが独善に陥り、おおいに問題があったというような取り上げ方をされていますね。もちろん、そういうこともあると思いますが、私はそれだけ…
「金融の仕組みは全部ロスチャイルドがつくった」安倍芳裕。抱腹絶倒の「と本」であります(笑)だけど、たまには、こんな本を読んでくすくす笑うのがいいでしょうね。陰謀論の基本は1.「ある」の証明は可能だが「ない」の証明はできない。なので「ない」…
「ホームレス失格」松井計。冒頭、有名な新宿の「殴られ屋」晴留屋明氏が登場する。殴られることで日々の糧を得る元ボクサーである。著者は、その殴られ屋の仕事を1日だけ手伝い、報酬をもらう。自分も「殴られ屋」をやってみたが、うまくいかなかった。あの…