Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

書評

悪魔の爪痕

「悪魔の爪痕」霧村悠康。 ある産婦人科医で、分娩を済ませたばかりの若い母親が乳がんで死亡してしまう。 しかし、乳がんは入院時の検査ではひっかからないほど早期であったはずで、早産の危険をさけるために使われた薬の副作用が疑われた。 そこで製薬会社…

摘出ー黒いカルテ

「摘出ー黒いカルテ」霧村悠康。 研修医の本木は、乳がん患者の左右の乳房を取り違えて、正常な乳房に切開のマーキングをしてしまう。指導医もそれに気が付かず、教授の高橋もそのまま執刀してしまう。 手術中にミスに気がついたが、もうどうにもならない。…

新陰流 小笠原長治

「新陰流 小笠原長治」津本陽。 一昨日、病院の家族控室で読んだ本。ま、肩のこらない歴史モノで。 小笠原長治は戦国時代から江戸初期にかけての剣豪である。真新陰流の創始者なのだが、一般人は柳生家の「柳生新陰流」のほうが有名。将軍家指南だし、五味康…

ラスト・ウィンター・マーダー

「ラスト・ウィンター・マーダー」バリー・ライガ。 読み出してから気がついたのだが、この小説は「さよならシリアルキラー」シリーズ3分冊のラストに当たる。私は、分冊の1、2をすっ飛ばして、いきなり完結を読んでしまったのだ。まあ、こんなのは「ある…

孫文

「孫文」陳舜臣。上下巻。 船戸与一の「満州国演義」を読んでから、私の世界が満州になってしまい(笑)その余韻で読んだ。 汪兆銘やら宮崎滔天などは、孫文抜きには語れないのだ。満州国の世界とつながっている。 読んで思わず呆然としてしまった。私は、孫…

比ぶものなき

「比ぶものなき」馳星周。 馳星周といえば「不夜城」シリーズ、つまりは新宿のアウトロー物語が看板だと思うのだが、なんと時代小説である。主人公に据えたのは藤原不比等である。 不比等は藤原鎌足の子供であるから、大化の改新を成し遂げた中大兄皇子の寵…

満州国演義 (全9冊)

「満州国演義」全9冊。 船戸与一。 不世出の大作家、船戸与一の遺作にして大作である。私は文庫で読んだが、全9冊。400字詰め原稿用紙換算で7000枚を超える。しかし、ゆっくりゆっくりとこの9冊を読み終えた今、「読んでよかった」という思いと「…

盤上の夜

「盤上の夜」宮内悠介。 2010年のSF大賞を受賞した短編を収録した短編集である。いずれも囲碁や将棋、麻雀、チェッカーといったボードゲームを素材にした連作短編である。前回「ティンカー、テイラー、、、」で挫折して苦しい思いを味わったので、まず間違い…

忍びたちの本能寺

「忍びたちの本能寺」近衛龍春。 この人の本は前に読んだ「九十二歳の関ヶ原」がたいへん面白かったので、期待して読んでみる。 主人公は忍者の多羅尾一族の妾腹の次男、伊兵衛である。織田信長の次男、信孝に仕えている。信孝は明智光秀の本能寺の変と、そ…

弁護士アイゼンベルク 突破口

「弁護士アイゼンベルク 突破口」アンドレアス・フェーア。 物語の冒頭、女性テレビプロデューサーのユーディットは出張先のホテルのバーで隣に座ったちょっとイケメンの男と話がはずむ。ユーディットはワンナイトラブの予感さえ抱くのだが、さらに同じバー…

弁護士アイゼンベルク

「弁護士アイゼンベルク」アンドレアス・フェーア。 女性刑事弁護士のアイゼンベルクは、夫と共同事務所を経営していた。夫は民事、アイゼンベルクは刑事を手掛ける。ところが夫は若い女に浮気したので離婚することになった。しかし、共同事務所を解散するの…

素晴らしき世界

「素晴らしき世界」マイクル・コナリー。 連休だったので、すかさずコナリーを読む。何しろ、外は極寒である。自転車に乗る気も削がれてしまうのだ。そうなると、お気に入りのCDをかけるかFMを聴くかしながら、好きな小説を読むという自堕落を決め込むことに…

汚名

「汚名」マイクル・コナリー。 ロス市警を退職してサンフェルナンド市の薄給のボランティアとして刑事をしているボッシュは(日本でいう定年後の嘱託)ある薬局での二重殺人事件の捜査をすることになる。薬局の防犯ビデオには事件の一部始終が記録されており…

べんけい飛脚

「べんけい飛脚」山本一力。 年末に、ぎっくり腰の再発をせぬよう、ゆっくりと大掃除しながら読んだ。 これが2021年の読書納めの一冊となった。 本書は2部構成となっており、第一部は売れない戯作者、雪之丞が加賀前田家の専属の飛脚、浅野屋に依頼されて前…

第四の扉

「第四の扉」ポール・アルテ。 ぼちぼち年の瀬で、年賀状やら大掃除、愛猫の物資の買いだめ等やることが目白押しなわけですが、気ばかり焦って何もせず。(笑)一応、気分を出してベートーヴェンの「第九」を鳴らして、あとはついついミステリを読んでしまう…

秀吉の能楽師

「秀吉の能楽師」奥山景布子。 山崎の神人、暮松新九郎は遊女宿の女主人をしている母から「秀吉のもとに行き、秀吉を能に没頭させろ」との命令を受ける。新九郎はさっそく朝鮮出兵中の名護屋に行く。秀吉は長い滞陣で飽きが来ており、新九郎の思惑どおり、今…

IQ

「IQ」ジョー・イデ。 アフリカ系アメリカ人のアイゼイア・クインターベイはそのイニシャルをとって「IQ」と周囲の人に呼ばれている。ミスターIQというわけだ。彼は、ひどく頭脳が優秀なので有名なのである。 IQには、かつてマーカスという、とても優秀な兄…

指し手の顔

「指し手の顔」首藤瓜於。副題は「脳男Ⅱ」 元力士で精神科に入院歴のある男が、どういうわけか症状が突然悪化して暴れだし、殺人を犯す。さらに、逮捕しようとする警察相手に暴れまわり、さらに死傷者を出し、最後に射殺される。この事件の舞台の愛宕市では…

償いは、今

「償いは、今」アラフェア・バーク。 主人公のオリヴィアは43歳独身の女性弁護士である。大手弁護士事務所のパートナーになるという夢は破れたが、友人のシャーロットの父であるドンの家庭的な弁護士事務所でパートナーとして働いている。彼女は結婚を前提に…

宇宙の戦士

「宇宙の戦士」ロバート・A・ハインライン。 ヒューゴー賞受賞という以前に、まずその後のSFに大きな影響を与えた名作である。なにをかくそう「パワードスーツ」というものを最初に考え出したのが本書なのだから。このアイディアは、その後、幾多のSF作品、…

レイトショー

「レイトショー」マイクル・コナリー。 コナリーといえばボッシュシリーズというわけで、ずっと飽きずに追いかけて読んでいるのだが、この本は新シリーズなのだ。コナリー先生、還暦を迎えるにあたり新シリーズをスタートさせる、ということ。このエネルギー…

ささやく真実

「ささやく真実」ヘレン・マクロイ。 美女クローディアがある生化学者のところを訪れる。この生化学者は、自白薬スコポラミンの誘導物質をつくることに成功して、試作品をつくっている。その名を「真実の瞬間」といい、これを飲むと2時間から3時間、秘密に…

黄砂の進撃

「黄砂の進撃」松岡圭佑。 この人の本は「千里眼」シリーズを読んだことがある。女性エスパーもので、あの筒井康隆の名作「七瀬ふたたび」を現代風にしたような感じだった。ほほう、歴史物を書いているのか、と思って読んでみた。 清国末期の「義和団の乱」…

ヘッドハンターズ

「ハッドハンターズ」ジョー・ネスボ。 週末はいきなり冷たい雨が降り続いた。それまで、夏の続きのような陽気だったから、愛猫もびっくりである。仕方ないのでストーブをだしてやったら、喜んで寝転んでいる。こっちも一緒にストーブにあたりつつ、北欧のミ…

書店主フィクリーのものがたり

「書店主フィクリーのものがたり」ガブリエル・ゼヴィン。 2016年本屋大賞を受賞した作品。本屋大賞は、文字通り書店員が投票によって選ぶ本である。私見では、年間でもっとも栄誉のある賞のひとつである。なぜかというと、書店員という仕事は、重労働で…

地球の静止する日

「地球の静止する日」ハヤカワSFのアンソロジーである。映画化された短編小説の原作を収めてある。以下の作品が収録。「趣味の問題」ブラッドベリ「ロト」ウォード・ムーア(性本能と原爆戦 原作)「殺人ブルドーザー」スタージョン「擬態」ドナルド・A・ウ…

思考機械の事件簿1

「思考機械の事件簿1」ジャック・フットレル。 本書を買ったのには、個人的ないわくがある。私は、あるところで短編ミステリの歴史的名作「13号独房の問題」を知った。何人も脱出不可能と言われた刑務所の第13号独房に、ヴァン・ドーゼン教授が「不可能…

逆説の日本史 近世爛熟編

井沢元彦の「逆説の日本史」シリーズは大変おもしろく、書店で見かけるたびに買い求めては週末に読んでいる。といっても、熱心な読者というわけでもなく、見かけたら買う、くらいである。 このシリーズは、実は第1巻の「古代黎明編」が秀逸だと思う。いまだ…

エレノア・オリファントは今日も元気です

「エレノア・オリファントは今日も元気です」ゲイル・ハニーマン。 英国で2017年にデビュー作として上梓、なんと220万部を売り上げたという作品である。220万部がすごい、と思うが、よく考えたらさらにすごい。だって、英国の人口を考えてみればわかる…

ドリームマシン

「ドリームマシン」クリストファー・プリースト。 このプリーストという作家は面白い作品を書くSF作家である。この本はずいぶん前に出版されたものの、今まで読む機会がなかった。古本屋で偶然に見つけて購入。 主人公のジューリアは27歳の女性地質学者で、…